新頭町戯曲集

複数人の作家で作られる戯曲によるエセメタバース

らんらんらんらんひののぎとん

★登場人物紹介
政岡、喋りたがり。
アンナ、歌いたがり。独特な笑い方をする。
 
 
前回までのあらすじ?
トゥモロウはネバーにノウズだった。
 
 
ディナーイベント。
アンナ、政岡、簡易ステージに並んでいる。
 
 
 
アンナ
ほんの、小さな、出来事にー、
 
政岡
入りが優しい、優しすぎます、ターンターン、
 
アンナ
愛はー、傷ーつーいてー、
 
政岡
ああ一瞬にして、一瞬にして愛傷ついちゃった、オウマイガットですな、チャンチャーン、
 
アンナ
君は、部屋をとびだしたー。
 
政岡
とびだしちゃった、気を付けてね道路とか危ないから。ちゃんと横断歩道とか右見て左見て、チャーンチャーン、
 
アンナ
真冬のー空のーしたーにー、
 
政岡
あったかい格好して出てったか、マフラーちゃーんとしましたか?心配だなあ、いや本当、
 
アンナ
編みかけーていたー、手袋とー、
 
政岡
おおーい、そんなん残してかないで、持ってっていや本当マジで、
 
アンナ
洗いーかけの洗濯物ー、
 
政岡
終わらせていきなはれやー、終わらせていきなはれやああああ、
 
アンナ
シャボンのーあーわがーゆれていたー。
 
政岡
え、手洗い?
 
アンナ
君のー、香りがーゆれてたー、
 
政岡
あああああああああああああ、
 
二人
たえまなくー、降りそそーぐー、こおのー、ゆきのよーおうーにー、君を愛せばよかったー、
 
政岡
この声が枯れるくらいにこの声が枯れるくらいにきみに好きと言えばよかったとですよ、
 
二人
窓にー、ふりそそーぐー、こおのー、雪のよおーおーにー、
 
アンナ
二人の愛は、流れたー。
 
政岡
ながれたあああああああああああああ、なんで、なんでこんな優しい音楽なの、なんで、なんで流れたー、愛流れたー、って普通に事実確認してんの、この野郎、もっと、終わったんだああああー、うわああああー、って晒してくれよ、なんなんこの優しさ、異常ではないかい、編みかけの手袋とか横にあるんだろう、ひきちぎってくれよ、編みかけの手袋、引きちぎって焚き火とか入れてメラメラに燃やし尽くしてくれよ、君の香り、揺れてる君の香り、ファブリーズで台無しにしまくってくれよおう、うおおおおう、ながれたー、じゃあないんですよ、なんなん、たえまなく降りそそぐこの雪のように、君を愛せば良かったー、じゃあないんですよ、そんな一瞬で終わる後悔いらないんですよ、追いかけていってよ、まだすぐそこなんだから、まだすぐそこに、君、いるんだから、追いかけて行ったら追いつく距離だから、そんな距離離れてないのよ、洗いかけの洗濯物のシャボンゆれてんだから、おーい、雪の中、絶え間なくふりそそぐ雪の中、どこまでもーかーぎりなくー降り積もるゆーきとあなたへの思い、少しでもー伝えたくてー、届けたくてー、そばに居て欲しくてー、凍える夜ー、待ちー合わせもーできないままー、明日を探していてくれよう、ながれたー、じゃあないんですよ、愛せば良かったー、じゃあないんですよ、どうなってんですか、二番に行きたまえ。
 
アンナ
思い出つまったこの部屋を、
 
政岡
なんか嫌な予感する。チャーンチャーン、
 
アンナ
僕もー出てーゆこーおーう。
 
政岡
おおおーい、お前も出ていくんかーい、おっかけやんかったんかーい、ジャーンジャーン
 
アンナ
ドアにかーぎをおろした時ー、
 
政岡
おろした時、おろした時、なんですか、
 
アンナ
なぜかー、涙がー、こぼれたー、
 
政岡
なぜかってわかってますやないかい、理由はっきりしとりますやないかーい、
 
アンナ
君が育てたサボテンはー、
 
政岡
うーわサボテンも残していきやがったのか、手袋だけでなく、なんてやつなんですか、
 
アンナ
ちいさなー、花をー、つくったー、
 
政岡
意味深ー、
 
アンナ
春はー、もうすぐ、そこまで、
 
政岡
あー、マジで今年こそ花見したかったですなあ、チャーンチャーン、
 
アンナ
恋はー、今ー、終わったー、
 
政岡
そうそう終わっちゃいましたわー、恋、今、今、今終わったんですか?
 
二人
こーのー長いふーゆーがおわーるまーでーになにかを見つけて生きようー、
なにかをー、しんじーてー、生きてゆーこーう、この、冬がー、終わるまでー、
 
アンナ
らんららんらんらんららーらー、
 
政岡
今、恋は今終わったとはいつのことでしょうか?
 
アンナ
らんららんらんらんららーらー、
 
政岡
サボテンがちいさな花を作った今、今、恋は終わった、この今とはいつのことでしょうか。
 
アンナ
らんららん、らんらんらラーラー、
 
政岡
つまりドアに鍵をおろしてなぜか涙を流していたあの時はまだ恋は終わっていなかったってことでしょうか。
 
二人
らんららんらんらんらラーラー、
 
政岡
らんらんららんらんらんららーらー、らんららんらんらんららーらー、らんららんらんらんららーらー、らんららん、らんらんららーらー、あーすみません、本当、調子乗りました。そう言う日ってありますよね。二人の間のことに、私なんか部外者が口を突っ込んでしまって本当にすみませんでした、あいつ待ってんだよ、早く追いかけていってやれよ、ってバイクの後ろに乗せて空港に運んでやる元恋のライバルみたいなスタンスをとってしまい、誠に申し訳ありませんでした、らんららんらんらんららーらー、ただ、言わせてくれ、らんらん言ってる場合じゃないですよ、らんららん言ってる場合じゃないですよ、怖いよ、春の陽気、なんにもみつかってなくない?なにかって、なにかなんて抽象的な言葉使ってるって、なんにも見つかってないって証拠ではないですかい、なにかとかなぜかとか、もう逃げまくってるとしか思えんですよ、春の陽気にこの歌包まれてますけども、なんすか、冬でしょ、根本、君、ちゃんと冬に向き合わねばならんですよ、なにかを見つけて生きようって言ってますけど、そんな見つけようとして見つけたなにかなんて信じられるなにかになにかしらのかたちで発展することなんて滅多にないわけですよ、この主人公は多分何にも信じることもなく、らんらんらんらん言ってるだけで、冬を覆い隠してるってことじゃあないのかい、って言うかそうするしかできんですよ、去っていった彼女を追いかけることもできんのだから、事実確認しかできんのだから、らんらんらんらん、年取ってきますよ、このままだと、らんらんらんらん年取って、らんらんらんらん確定申告して、らんらんらんらんらんらんらんらん言いながら、君の育てたサボテンだけちゃんと世話してくわけでしょう、いや、花、君が育てたサボテンがつくった小さな花によって、この恋は終わったってことでしょう、偶発的に生まれた花が終わりを告げてくれたってことでしょうか、おそらくその花を彼が見つけたときに彼の頭の中ではこれまでの君との生活が浮かんでいたことでしょう、シャボンが揺れてたかもしれないし、ギターを弾いてくだらない歌を歌っていたかもしれない、セーターを編んだり、爪切りをなくしたり、部屋のカビ駆除に奔走したり、布団カバーの設置に手間取った過去過去過去が、サボテンの小さな花を見ている彼の脳内にめまぐるしく浮かんでいたかもしれない、いや、そんなことないかもしれない、だけどはっきりわかってることはこれだけですよ、小さな花が恋を終わらせたってことです。だから彼はらんらん言ってるんです、これからもらんらん言ってくことでしょう、どうなんでしょうか、彼はこれかもらんらんらんらんしてくのでしょうか、らんらんらんらんがおさまることはあるのでしょうか、教えてください、先生、うわーーーーー、先生、この主人公は俺だーーーーーー、うわあああああああーーーーー、
 
  政岡、部屋から飛び出していく。
 
アンナ
らんららんらんらんらラーラー、らんららんらんらんらラーラー、らんららんらんらんらラーラー、らんららんらんらんらラーラー、らんらんららんらんらラーラー、らんららんらんらんらラーラー、らんららんらら、ララララー。
 
  アンナ礼をする。
 
  拍手がパラパラと起こる。
 
 
終わり。