新頭町戯曲集

複数人の作家で作られる戯曲によるエセメタバース

tomorow はneverにknowsなのだ

★登場人物紹介
政岡、喋りたがり
アンナ、歌いたがり


政岡
3、2、1、ハイ、


アンナ
チャンチャンチャンチャンチャン、チャララララン、チャララララン、チャラララ、タンタンタンタンタン、タララララン、タララララン、


政岡
はい、もうすでに悲しい、もうすでに悲しい予感しかしない、では行ってみよう、トゥトゥトゥ、


アンナ
とどまーることしらなーい、ときのー中でー、いーくつものー、移りーゆく街並をー、眺めーていたー、


政岡
チャラララララン、と、はい、まず主人公が眺めているのは街並、それもいくつも、街並みの変わっていく情景をいくつも眺めていた、眺めるっていうのは客観的な言葉ですね、街との距離がないと眺められないわけですからね、だけど、街っつーものは不思議なもので、街の外からだけでなく、街のど真ん中からでも街を眺めることができるわけだ、街のど真ん中からでも客観性を持って眺められる、主人公はふと客観性を持ってしまった、おそらく街中を歩いていて、ふと何かの店がなくなっている、何か道路が新しくなっている、昔の雰囲気と今の雰囲気が違う、そう気付いてしまった、そこで時の流れを感じている、時のとどまることのなさを、それによって移ろいできた街を感じている、どうぞ、チャラララララン、


アンナ
おさなーすぎてー、消えたー、帰らーぬ、夢のー、おーもかげを、すれちーがう少年にー、かさねーたりしてー、


政岡
夢、夢の面影を少年に重ねている、それも幼すぎて消えた夢の面影、わかりそうでわからない言葉、夢が幼すぎて育たなかったのか、自分が幼すぎるが故に抱いたが消してしまった面影なのか、どちらにせよ消えてしまった夢をすれ違う少年に重ねている、客観的な街並を眺める状態の中で、タラララ、


アンナ
無邪気ーに人を、うらぎーれるほどー、なーにもかーもを欲しがっていーたー、わかりーあえたー、友のー、愛しーた、ひとーでさーえもー、


政岡
つーぐなうー、こーとさえでーきずにー、今日もー、傷みをだーき、


アンナ
むーちゅうでかーけーぬけるけーれどもー、まーだー、明日は見えーずー、


二人
勝利も敗北もないまま、孤独なレースはつづいーてく、


政岡
チャンチャンチャンチャンチャン、って孤独なレースってなんだよー、勝利も敗北もない孤独なレースってなんなんだよー、それってレースって言うのかよー、さて、順を追ってみて行こう、まずは回顧、すれ違う少年に消えた夢の面影を重ねて、自分の過去を回顧しはじめる、わかりあえた友の愛した人でもさえも、欲しがっていた過去、さえもですよ、そうじゃない人ももちろん欲しがっていた、そして無邪気に人を裏切っていた、若き日の欲望、欲望のための裏切り、裏切りのための罪、それを償うこともできず今日に至るフューチャリング傷みと共に、さて、大事なのはここ、明日がまだ見えていないことを嘆いているわけですね、なんとか無我夢中で駆け抜ければいつかは明日は見えてくると信じている状態なわけだ、だけど明日は見えない、ここ、重要なのはここでしょうね、「明日が見えたい」とはなんだ、もっと言えば「明日」とはなんだ、傷みを抱いてる「今日」と見えない「明日」、勝利も敗北もない孤独なレース、この言葉が全てを表しているわけであります、償うことができない罪の意識が孤独のレースを走らせる、他者のないレース、自分一人の孤独なレース、加速していく孤独なレース、明日とは孤独のレースから脱却できた明日である、罪によって消してしまった幼き夢を追い求めることができる明日である、そんな明日に向かって夢中で駆ーけー抜けるけーれどもー、まーだー、明日は見えーずー、なわけでありまして、


アンナ
勝利も敗北もないまま、


政岡
加速していく、加速していく、


アンナ
孤独なレースはつづいーてく、


政岡
チャンチャンチャンチャンチャン、チャララララン、チャララララン、チャラララ、タンタンタンタンタン、タララララン、タララララン、トゥトゥトゥ、


アンナ
人はー、悲しいぐらいー、忘れーていくー、いきものぉうぉう、


政岡
そうなんです、忘れていくのですよ、


アンナ
愛されーるよろーこびもー、寂しい過去もー、


政岡
そうなんです、本当そうなんです、忘れてしまったはずなんです、忘れてしまったはずなのに、ふと、本当ふと、思い出してしまうから、


アンナ
今よーり前ーにー、進むーたーめーにはーあー、


政岡
進むためには、進むためにはなんですか、


アンナ
争いは避けてー、とおれなあーい、


政岡
争い、本当、そう、本当そうなんです、争いは避けて通れませんのよ、


アンナ
そんな風ーにしてせーかいはーあー、


政岡
今こそ、今こそ争いの時、


アンナ
今日も、まわりつーづけてーるー、


政岡
孤独のレースからの脱却の時なんですよ、


アンナ
はーてしなーいー、闇のむーこうにぃ、


二人
ウォッ、オォ、


アンナ
手を伸ばそーう、


政岡
だーれかのーたーめに生きてー、みてもぉ、


二人
ウォッ、オォ、


アンナ
トゥッモーロゥネーバノーオゥオーズ、


二人
心のまま、僕は行くのさ、誰も知ることのない明日へー、


政岡
うぅうー、明日とは、誰も知ることのできない明日である、明日何が起こるのか、そんなことは本当はわからないものである、予想はできる、予定は立てられる、明日は八時から仕事して、十七時に終わって、帰ったら十九時前で、ご飯食べて、お風呂はいって、テレビ見て、ボーッとして、明日とは、だけどもそれらのスケジュールからこぼれ落ちてしまう明日である、明日とは、未来とはわからないものである、スケジュールを捨てた明日、心のまま行く明日、そんな明日はしかし、不安である、不安である、不安である、争いなんかしたくない、平穏なまま生きていたい、心を乱されたくない、不安である、手を広げる、手がある、指がある、風を感じる、足を上げる、足がある、地面に踏み込む、私の重みを受ける、手を伸ばす、どこに、闇に、闇とはどこかね、この世界に闇なんてあるのかね、俺の闇はどこだ、うあああああ、


アンナ
優しさだけじゃ、生きられない、


政岡
わかってるよ、そんなこと、


アンナ
別れを選んだ人もいる、


政岡
ごめん、なんのこと、


アンナ
再び僕らは出会うだろう、


政岡
ごめん、僕らって誰のこと、


アンナ
この長い旅路のどこかーでーえー、


政岡
旅路、旅路ってのは何ですか、人生とかそういうことですか、再び僕ら、出会うんですか、マジですか、え、別れたんでしょう、僕ら、優しさだけじゃ生きられなかったんでしょう、僕ら、心のまま生きられなかったんでしょう、僕ら、心のまま生きるって、争いは避けて通れないってことですよね、優しさだけじゃ生きれないってことですよね、再び僕ら出会うんですか、闇だなあ、マジ闇ですよ、あーー、ダメだ、明日でしょう、明日は闇でしょう、手を伸ばすことはできますかね、闇に、闇に、怖いでしょう、闇は、果てしないでしょう、あーー、ダメだ、あーー、怖い、あーー、明日、あーー、ノウズだわ、トゥモロウマジでネバーなノウズだわ、うん、そうそう、崖、崖から飛び立つイメージ、そうそう、パーって羽ばたくイメージ、うん、そうそう、崖、崖からですよ、ここ、ここからですよ、こう、ふわっと、明日に向かって、ふわああっと、明日に向かって明日に向かって、羽ばたけ、きらめけ、羽ばたく、飛び立つ、イメージで、そう、いけるいける、タラタンタンタ、タンタンタ、タンタンタ、ターーン、


政岡
はーてしなーいー、闇のむーこうにぃ、


二人
ウォッ、オォ、


政岡
手を伸ばそーう、


アンナ
いーえるこーと、ないいたーみならあ、


二人
いっそぉ、


アンナ
ひきつれーてーえぇー、


政岡
すーこしぐらい、はーみーだしたっていいさぁ、


二人
ウォッ、オォ、


政岡
夢をー、えがこーおぉーおぉーおぅ、


アンナ
だれかーのっ、たーめーに、生きてみーたあってー、


二人
ウォッ、オォ、


政岡
トゥッモーロゥネーバノーオゥオーズ、


二人
心のまま、僕は行くのさ、誰も知ることのない明日へー、


政岡
ウーフウー、うぉーおーおおーおーう、


アンナ
フー、ハアアーン、ハアア、ハアア、ハーアアア、アアアーアー、フー、ウーハーん。


二人
どうも、ありがとうございました。


会場、シーンとしている。


客のうちの一人だけ拍手する。


それにつられて、空気を読む人もちらっとだけ続く。




終わり。