頭町戯曲集

上演を前提にしないエッセイの様な戯曲の集い

戯曲集「カッツさんのターク」を読む会 〜「増殖するエントロピー」編〜

★登場人物紹介
峰、カップ麺の容器を集めるのが趣味、劇団員
佐田原、猫舌、劇団員
耳子、穴岩耳子、26歳、魚座、劇団員


○前回までのあらすじ
峰はある日、つまんないパフォーマンス見た気晴らしにパチンコでも行こうかと思って歩いていると、ビルの端っこに「カッツさんのタークあり〼」と書かれた張り紙が。「カッツさんのターク」とはなんぞやと地下へと降りて受付で受け取ったものは、戯曲集らしいA3用紙の束と偽札の百万円だった。せっかくなので、劇団仲間の佐田原と耳子くんを誘って劇作家ヒロアキ正念場の「カッツさんのターク」戯曲集を読む会を開くことにし、第一の戯曲「朧月」は破茶滅茶ながらも、猿蟹合戦を匂わせ、とどまることを知らない人間の欲と決意をがんじがらめにこんがらがらさせた名作であった。


戯曲集「カッツさんのターク」を読む会 〜「増殖するエントロピー」編〜


稽古場。


耳子、寝転がっている。


佐田原、入ってくる、


佐田原
耳子くんってさあ、


耳子
なんですか?


佐田原
トイレ行かないよね、


耳子
行きますよ、


佐田原
うん、行くんだろうけども、


耳子
行きますよ、人間だもの、


佐田原
うん、そう、行くんだろうけどもね、少なくとも、こういうさ、休憩時間にね、


耳子
あー、


佐田原
行かないよね、


耳子
あれなんですよね、私、私を受け入れてくれるトイレじゃないとダメなんですよね、


佐田原
私を受け入れてくれるトイレ、


耳子
受け入れてくれるんですよ、トイレが、


佐田原
え、何言ってるの?


耳子
トイレってあるじゃないですか、


佐田原
トイレはあるよ、


耳子
トイレはあるんですけど、トイレの雰囲気ってあるじゃないですか?


佐田原
あるね、トイレの雰囲気、


耳子
それなのかなあと思うのだけれども、


峰、この辺りで入ってきている。


耳子
トイレのドアあるじゃないですか、


佐田原
あるね、トイレのドア、個室の、


耳子
それ、触んなきゃいけないじゃないですか、


佐田原
うん、触んなきゃ入れないからね、個室に、



なんの話してんだよ、


耳子
触ると、あれなんですよね、トイレが私を受け入れてくれてるか否かピーンって感じでわかるんですよ、


佐田原
ピーンって何?あ、受け入れてくれてるーって、


耳子
そうですそうです、あ、受け入れてくれてるー、て、なるか、ああ、受け入れてくれないんだー、ってなるかで、ここの施設のトイレは、ああ、受け入れてくれないんだー、なんですよ、


佐田原
え、何、それは、耳子くんの匙加減でないの、


耳子
違います違います、決して匙加減なんかじゃないです、ピーンってくるんですもん、ピーンって、


佐田原
いや、だって、それは、綺麗とか汚いとか、匂いとかそういう、あらゆるトイレ全体の雰囲気を察してさ、総合的に判断してさ、


耳子
だって見てないんですもん、


佐田原
あ、そっか、


耳子
ドアがこう、ドーンとあるんですから、中が綺麗か汚いかなんて見えないじゃないですか、ドア触った時にピーンってくるんですから、


佐田原
いや、だからそれはさ、匂いだとかドア越しの雰囲気だとか、



もういいいよ、何、この話、何なの、次読もうよ、


佐田原
オーケイ、次読もう、


耳子
待ってくださいよ、



うん、待つけど、


耳子
今この感じで終わったら私の超能力全然信じてもらえてないじゃないですか、


佐田原
それは、超能力なの、


耳子
超能力ですよ、れっきとした超能力じゃないですか、ねえ?



え、うん、まあ、超能力といえば、超能力かな、


佐田原
え、峰くんそっち側なの?



俺どっちでもいいんだよ、次読もうよ、


佐田原
オーケイ次読もうか、


耳子
ちょっと待って、



マー、タない、もう、待たない、


耳子
いや、待たなくていいんですけど、今からトイレ行きません?


佐田原
女子トイレ?


耳子
私、ピーンってくる瞬間見せますから、


佐田原
女子トイレだよね、


耳子
男子トイレでもいいですよ、



わかった、


佐田原
え、わかったの?



行こ行こ、行こう、見ないことには話が進まないよ、


佐田原
そういうことかね、


三人トイレに行く、


ポカンとした稽古場。


しばらくして、三人戻ってくる。



よし、じゃあ、読むか、


佐田原
オッケイ、読もう、


耳子
うーん、


佐田原
信じてるって、信じてるから耳子くんの超能力、


耳子
だって笑ってたじゃないですか、


佐田原
笑うよ、誰だって笑うよ、ピーンって、ねえ、



ああ、うん、


耳子
どうしたら伝わるのかなあ、この感じ、


佐田原
難しい問題だなあ、そのピーンってきた実感が耳子くんの中にはあるのはわかったよ、わかったけど、こっちからしたら、耳子くんの身体が一瞬ビクってなってただけだから、そりゃあ、面白いよね、


耳子
うーん、まあそうですよねえ、


佐田原
いやでも信じてるよ、信じてるから、そこは安心してよ、いや、笑っちゃったけど、そこは必ずしもイコール信じていないではないから、いや、むしろ笑っちゃったから信じちゃったみたいなとこあるし、うん、


耳子
うーん、まあ、そうですね、じゃあ、、、読みますか、


佐田原
はい、読みましょう、



えーと、次、なんだけど、二作目ね、ちょっとややこしい戯曲なんだけど、そこが面白くて、タイトルが「増殖するエントロピー」、


佐田原
なんかすごいタイトルだな、



真田を佐田原読んでください、


佐田原
はい、



光川を耳子くん読んでください、


耳子
はい、



で、ト書きと藤田を俺が読みます。では、


峰が読むト書き
増殖するエントロピー、教室、放課後、段ボールで作られた張りぼてや人形などが散らばっている。ドレスのような衣装を縫う光川、ふと手を止めて、窓の外を見る、外から微かに声が聞こえる。真田、入ってくる。


佐田原演じる真田
アレ?


耳子演じる光川
あ、真田くん、


佐田原演じる真田
練習、行かなくていいの?


耳子演じる光川
私、鳥の鳴き声するだけだから、衣装作り頼まれちゃった、


佐田原演じる真田
押し付けられたか、


耳子演じる光川
みんな、こういうの意外に好きなんだね、


佐田原演じる真田
そうだなあ、張り切ってるもんなあ、特に穴村、


耳子演じる光川
穴村さん、脚本なんて書けるのね、すごいよね、


佐田原演じる真田
どこがよ、


耳子演じる光川
真田くん脚本書けるの?


佐田原演じる真田
書けないけどね、この脚本は俺の美的感覚にそぐわねえんだよ、


耳子演じる光川
不満なんだ、


佐田原演じる真田
不満不満、大不満、詰め込みすぎだよ、詰め込みすぎ、タイムトラベルラブミステリーなんて言ってるけど、本当にありきたりというかなんというか、


耳子演じる光川
だからサボってるんだ、


佐田原演じる真田
俺はもっとゲージュツがしたいね、ゲージュツは大爆発だろう、


耳子演じる光川
大爆発しちゃうんだ、


佐田原演じる真田
俺はやだな、こんなありきたりな劇するの、


耳子演じる光川
ホーホケキョ、ホーホケキョ、


佐田原演じる真田
なんだ光川も意外にやる気じゃんよ、


耳子演じる光川
そんなことないよ、だけど私、昔から鳥の鳴き声真似するの好きなんだ、コッケコッコー、コケーコココ、コケーコココ、


佐田原演じる真田
なあ光川、


耳子演じる光川
何?


佐田原演じる真田
お前って、


峰が読むト書き
そこに、藤田駆け込んでくる、


峰演じる藤田
真田あああ、


佐田原演じる真田
なんだよ、藤田、うるせえな、


峰演じる藤田
見てくれ、これ、見てくれ、


佐田原演じる真田
なんだよこれは、


峰演じる藤田
戯曲、落ちてた、道端に、


耳子
戯曲?


佐田原
道端に落ちてんだ、


耳子
唐突だなあ、


佐田原演じる真田
なんだよ、なんで戯曲が道端に落ちてんだよ、


佐田原
同じこと言ってら、


峰演じる藤田
道端に、ポツンと、落っこってたの、なんか知らないけど、そこの道端に、


佐田原演じる真田
作者は誰なのよ、


峰演じる藤田
ええと、ヒロアキ正念場、って書いてあるな、誰だコイツ、


佐田原
うわー、メタだー、


耳子
メタギャグだー、


佐田原演じる真田
知らねえのかよ、どっかの足臭そうなオジさんが劇団員達に持って行こうとして落としたんでないの、


耳子
メタギャグだー、


佐田原演じる真田
で、なんで、そんな戯曲拾ってきたんだよ、


峰演じる藤田
おめえクラス劇つまんねえからゲリラで劇つくってやろうかなと言ってたべ、


佐田原演じる真田
ああ、言ったな、


峰演じる藤田
だけれど、戯曲書けないんだよなーって言ってたべ、


佐田原演じる真田
ああ、言ったべな、


峰演じる藤田
ほれ、戯曲、


佐田原演じる真田
道端に落ちてた戯曲やんのかよ、


峰演じる藤田
道端に落ちてようが落ちてなかろうが戯曲は戯曲よ、


佐田原演じる真田
うーむ、で、内容は?


峰演じる藤田
まだ読んでないんだ、


佐田原演じる真田、
読んでないのかよ、


峰演じる藤田
俺、文字が五行以上書いてるの、読めねえんだわ、だから、


佐田原演じる真田
一緒に読もうってか、


峰演じる藤田
ダベダベ、


佐田原演じる真田
そうだなあ、せっかくだから読んでみるか、光川、


耳子演じる光川
何?


佐田原演じる真田
聞いてただろ、というわけなんだけど、お前も読むの手伝ってよ、


耳子演じる光川
私が?


佐田原演じる真田
ちょっと読んでみるだけだから、


耳子演じる光川
だって私、衣装縫わないと、


佐田原演じる真田
いいからいいから、衣装なんていいから、


耳子演じる光川
じゃ、今日だけね、


峰演じる藤田
やったぜい、助かりますわ〜、


佐田原演じる真田
よーし、じゃあ、早速読んでいこう、ええーと、タイトルは、「二千夜一夜物語」、どっかで聞いたことある名前だな、幕、舞台一面に花が咲き乱れている、さながら天国を思わせる。コロス、コロスってのはなんだよ、


耳子演じる光川
コロスってのはコーラスの語源と言われてるもので、劇の手ほどきする合唱隊みたいなイメージかな、私も詳しく知らないけれど、


佐田原演じる真田
へえー、詳しいんだな、光川、


峰演じる藤田
で、このコロスの部分は誰が読むんすかね、


耳子演じる光川
コロスは多人数で読まれることが多いから、みんなで読んでみましょうか、


佐田原演じる真田、耳子演じる光川、峰演じる藤田、三人で読むコロス
音もなく、光もない、長い長い魑魅魍魎が蠢く時代が終わり、薄く透明な絹に覆われた世界がやってきた。魑魅魍魎のチミチミとした魑魅、モウモウとした魍魎、それぞれがそれぞれに土の下、木の隙間、川の源流へと帰って行った。しかし、この世界に取り残された魑魅もいたし、魍魎もいた。青年ペンパルバーンは病気の母の看病のため毎日働いていた。トッテンカッチントッテンカッチン、と家を建て、サッツンサッツンサッツンサッツン、土を耕し、パッチンポッチン、ハッチンペッチン、牛を育てた。ペンパルバーンは畑へと続く道を今日も歩く、母のために、今日も歩く。今日も歩く。


峰演じる藤田
おおー、


佐田原演じる真田
いいねえ、なんか劇っぽいよ、


耳子
いいかあ、


佐田原
それっぽい言葉をそれっぽく並べたとしか思えんよな、



でも劇を知らない高校生が知らない戯曲を読むって興奮はあるかもしれないね、


耳子
そういうもんかなあ、


佐田原演じる真田演じるペンパルバーン
こんなところに洞穴がある、入ってみよう、


佐田原
えーーー、すごい説明台詞、


耳子
笑っちゃうぐらい状況説明、



能っぽい感じもするなあ、


佐田原演じる真田が読むト書き
ペンパルバーンの入った洞穴の中には美女アナリリスがいる。


耳子演じる光川演じるアナリリス
ソチはダレゾ、


佐田原演じる真田演じるペンパルバーン
私は、大工であり農家であり牛飼いのペンパルバーンと申します、美しいお人よ、


耳子演じる光川演じるアナリリス
美しいお人デスッテ、笑止、アナタ、ここがどこだかわかって?


佐田原演じる真田演じるペンパルバーン
ここは洞穴であります、いつもの畑へと続く道の途中、昨日までは気がつかなかった場所に洞穴ができていたので、私はふと、入ってみようという気になったのであります。


耳子演じる光川演じるアナリリス
オホホホホホ、そいつは残念、盛者必衰、理の鐘の声でございます、ここはねえ、アナタ、洞穴なんかじゃないわ、アナタ、とってもいいところなのよ、ほら、ご覧、お花が咲いているでしょう、花が洞穴の中なんぞで育つかしら、農業をやってらっしゃるアナタには百も承知の如く、こんな日の差さないところに花なんて育つわきゃあないわね、アラ、でもどうして、アナタの顔が見えるのかしら、アナタ、松明も持たずにここに入ってきたの、ねえアナタ、不思議なこともあるもんねえ、アナタ、ワタシの顔がよーく見えるわね、つまりそういったいいところなのよ、


佐田原演じる真田
光川、お前結構すごいな、演技経験あるだろう、


耳子演じる光川
止めないで、一旦止まると私、恥ずかしくなっちゃうから、止めずに続けて、


佐田原演じる真田演じるペンパルバーン
いかにここが不思議な土地であろうと、あなたの美しさとは関係のないことでありましょう、


耳子演じる光川演じるアナリリス
オホホホホホ、笑止、千万、闇夜に太陽が昇っても、どちらが勝つかは千も承知、私の美貌は太陽とおっしゃるの、かわいいかわいい赤ん坊さん、私はどこまでも真似するだけ、太陽を真似て闇夜を真似て、不思議なおとぎの国に迷い込んだアナタを真似る、ボーっと見ていらっしゃるのは私の鼻かしら、それとも指先、もしくは大きな瞳かしら、


佐田原演じる真田演じるペンパルバーン
もちろんあなたの、もちろん、あなたの、その、美しい、


耳子演じる光川演じるアナリリス
オホホホホホ、オホホホホホ、ぺレッサ、ぺレッサ、


峰演じる藤田演じるぺレッサ
なんだよアナリリス、ほーう、こいつは妙なお客さんだなあ、アナリリス、お前、こいつに惚れてるのか、


耳子演じる光川演じるアナリリス
馬鹿言っちゃいけないよ、こんなパイパイにしか興味のない赤ん坊小僧になんの興味があるってんだい、ねえ、ぺレッサ、ちょいとアレを持ってきておくれよ、


峰演じる藤田演じるぺレッサ
ほーう、そいつはグッドアイデアだ、お天道さんもひっくり返って笑い転げらあ、


佐田原演じる真田演じるペンパルバーン
な、何をなさるおつもりです、


耳子演じる光川演じるアナリリス
ね、えー、アナター、ちょいとアタシを助けてくださらないー、


佐田原演じる真田演じるペンパルバーン
パイパイにしか興味のない赤ん坊に何かできるのでございますか、


耳子演じる光川演じアナリリス
アナタ、怒っているのね、怒っているのでしょう、違うのよ、パイパイにしか興味のない赤ん坊小僧にしかできないことなのよ、お願い、助けてくださらない、


佐田原演じる真田演じるペンパルバーン
私は、私は、帰ります、う、アレ、出口はどこだ、


耳子演じる光川演じるアナリリス
オホホホホホ、残念無念、厚生年金、年々減少、あーら私たちの老後はどうなっちゃうのかしらー、


佐田原
メタだー、


耳子
変なとこでメタギャグ入ってくるな、


佐田原演じる真田
厚生年金、なんのことだ、


峰演じる藤田
いきなり厚生年金なんて単語出てくるのは変だべな、


耳子演じる光川
これはメタギャグって言って、厚生年金なんて私たちの世界の言葉でしょ、劇の世界とは一旦離れて私たちの世界の言葉が入ってきて、なんていうのかな、世界が、こうずれるというか、こんな劇の世界で、私たちの現実の問題出てくるのかよー、っていうギャグよ、


佐田原演じる真田
はー、なるほどなー、光川、お前、詳しいな、


耳子演じる光川
ああー、止めないで、止めないで、早く続けて、ああー、


佐田原
なんなの、この止めないでキャラは、妙にエロいんだが、


耳子
え、そういう風に捉えるんですか、


佐田原
え、だって、



ちょっと止めずに読もうよ、


佐田原
ここにもいたよ、止めないでキャラが、あー、ごめん、ええと、どこだっけ、


佐田原演じる真田演じるペンパルバーン
厚生年金、なんのことだ、


耳子演じる光川演じるアナリリス
オホホホホホ、なんでもないのよ、かわいい坊や、あなたはもうここから出られないのです、


佐田原演じる真田演じるペンパルバーン
な、なんですって、そ、それじゃあ、病気の母さんはどうなるんです、


耳子演じる光川演じるアナリリス
死ぬ、


佐田原演じる真田演じるペンパルバーン
死ぬ、だと、出せー、ここから俺を出すんだー、


峰演じる藤田演じるぺレッサ
おおーっとかわいい赤ん坊坊やさん、暴力はいけねえな、暴力は、


佐田原演じる真田演じるペンパルバーン
は、離せ、俺をここから出しやがれ、


耳子演じる光川演じるアナリリス
ちょいとちょいとお前さん、まあまあ落ち着きなはれお前さん、


佐田原演じる真田演じるペンパルバーン
落ち着けだと、最愛の母の命が危ぶまれ、母の死に際にも立ち会えない私に落ち着けと申すのか、


耳子演じる光川演じるアナリリス
出られる方法は、ありんす、


佐田原演じる真田演じるペンパルバーン
あるのか、


耳子演じる光川演じるアナリリス
ありんす、


耳子
何故、女郎言葉、


峰演じる藤田演じるぺレッサ
簡単なことさ、俺たちと一緒にこの戯曲を演じれば良いのさ、


耳子
戯曲?


佐田原
戯曲めっちゃ出てくるな、


耳子
大丈夫?この戯曲、戯曲めっちゃ出てくるけど、



そこがややこしいんだけど面白いんだよなあ、


佐田原演じる真田
戯曲?


佐田原
耳子くんと全く同じセリフだよ、


峰演じる藤田
戯曲の中で戯曲が出てくるっすかあ、


耳子演じる光川
もう、劇中劇って呼ばれるジャンルよ、そんなことも知らないの、


佐田原演じる真田
劇中劇?


耳子演じる光川
劇の中で劇が行われて進む劇のことよ、


峰演じる藤田
そんれのどこが面白いんだ?


耳子演じる光川
ああ、止めないで、劇中劇はいかにのめりこめるかが重要なんだから、早く、早く続けてよ、


佐田原
ええ、ちょっと待って、すごい、複雑になってきたなあ、



だろう、


佐田原
ここで劇中劇の劇されちゃうと、俺らにとっては劇中劇中劇、ってことになるのか、あってる?



うん、多分


耳子演じる光川
ちょっと、止めないでったら、何度言ったらわかるのよ、


佐田原
あ、ごめん、あれ、



どこからだっけ、


佐田原
次、俺か、


佐田原演じる真田
あれ、ごめん、どこからだっけ?


佐田原
うわ、なんか気持ち悪いな、


耳子演じる光川
ぺレッサが俺たちとこの戯曲を演じればいいのさのセリフの後のペンパルバーンからよ、


佐田原
ああ、そっか、アレ、今のセリフ?


耳子
セリフよ、


佐田原
もう、耳子くんが言ってるのか劇中の人物が言ってるのかわからなくなってきたよ、


耳子演じる光川
はーやく、はーやく止めないで続けてよ、



光川はめちゃくちゃ急かしてくるなあ、


佐田原演じる真田演じるペンパルバーン
戯曲を演じる、何故だ、


峰演じる藤田演じるぺレッサ
理由なんてどうでもいいじゃないかね、そうすれば少なくとも出られる可能性があるんだ、


佐田原演じる真田演じるペンパルバーン
本当だな、


耳子演じる光川演じるアナリリス
オホホホホホ、ただし、本気で演じてくれなくちゃあダメよダメよダメなのよーん、よ、この劇は神々に見せる神聖な劇よ、神々から認められなきゃあ私たちは一生ここから這い出ることはできないのよ、言ってる意味はお分かり?


佐田原演じる真田演じるペンパルバーン
かしこまりました。


耳子演じる光川演じるアナリリス
それでは始めましょう、タイトルは、「ウロボロスのベビー」、張り切ってどうぞ、


佐田原演じる真田演じるペンパルバーン演じるウロボロスのベビー
ママ、ママ、ママ、ママはどうして僕に厳しくするですか、ママ、ママ、ママ、友達のママはみんな優しいって言ってるよ、ママ、ママ、ママ、僕を優しく抱っこしてよ、キスしてよ、よしよししてよ、お願いだよ、ママ、


耳子演じる光川演じるアナリリス演じるウロボロスのママ
完全、それこそが私たち一族が求めてきたものであります、ベビーちゃん、完全は美しい、完全は宇宙、完全は不死のテーゼ、私はアナタを厳しく育て上げます、ベビーちゃん、いかなる手段を持っても、完全なるウロボロスへと仕立て上げなければならないのであります、


佐田原演じる真田演じるペンパルバーン演じるウロボロスのベビー
だけどママ、僕はまだまだ子供だよ、完全なんてものは大人になってから求めても良いものではありませんのか、僕だって、お友達のように卓上ゲームがしたい、計算ゲームがしたい、歌を歌って、舞を舞いたい、


耳子演じる光川演じるアナリリス演じるウロボロスのママ
イケマセン!(ビシい)


佐田原演じる真田演じるペンパルバーン演じるウロボロスのベビー
イタイ、


耳子演じる真田演じるペンパルバーン演じるウロボロスのママ
卓上ゲーム、計算ゲーム、歌を歌う、舞を舞うですって、なんてはしたないこと考える子でしょうね、(ビシい)、そんなはしたない子にはこうです!(ビシい)


佐田原演じる真田演じるペンパルバーン演じるウロボロスのベビー
ああ、イタイイタイ、止めてよ、止めてよ、ママ、その攻撃はひどく辛いよ、


耳子演じる光川演じるアナリリス
ちょっとアナタ、もう少しイタイって気持ちを前面に押し出せないのかしらネエ、


佐田原
ここでダメだしですか、


耳子演じる光川演じるアナリリス
いくら鞭で打つのは芝居だからといって、もう少し頑張っていただかないとこっちも演じようがないじゃありませんか、


耳子演じる光川
このセリフ、私さっきからずっと思ってたのよね、


佐田原演じる真田
な、なんだよ、


耳子演じる光川
あなたたち、いくら演技経験ないからって、初見読みだからって、もう少し相手のセリフを聞いてさ、相手との呼吸を合わせてさ、もう少し頑張ってもらわないと、こっちも演技できないじゃない、


佐田原
おおっとここでも駄目出しですか、


耳子
二重の駄目出しか、なるほど、演出効果としてはアリかもね、


峰演じる藤田
そ、そんなあ、わてらは一回も演技したことねえんだぜ、ちょっとぐらい甘く見てくれたって、


耳子演じる光川
一回も演技したことないからこそなのよ、一回も演技したことがないからこその純粋な読み方を私としては求めているのよ、なのに、ああ、困った困った、世の中にテレビがあってパソコンがあって、ドラマ見れて映画見れてって簡単にできるのが悪いわ、演技ってこういうものでしょって植え付けられちゃうのよ、違うのよ、もっともっとあなたらしい演技を見たいのよ、私は、わかる?


耳子
本当そう、本当そうよ、


佐田原
あ、耳子くんわかるんだ、



待って、逸脱するとややこしくなるから、早く続けようよ、


佐田原演じる真田
ちょっと待って、



マー、タないよ、早く続けようよ、


佐田原
違う違う、今のセリフよ、真田のセリフよ



あ、ごめん、あー、


佐田原演じる真田
ちょっと待って、落ち着けよ、光川、


耳子演じる光川
あ、ごめん、真田くん、私、なんか変に熱が入っちゃって、やめましょう、戯曲読むの、なんだか、私が私でなくなっていくみたい、


佐田原
ほーー、なるほど、すごい、そういう戯曲か、面白くなってきたぞ、



だろう、ややこしいけど、


耳子
登場人物が劇中劇中劇によって自分を失っていくという構成なわけね、よくできてるわー、



早く続けよう、抜け出るとややこしくなっちゃうから、


佐田原演じる真田
待てよ、ここまで来たんだ、最後まで読んでやろうぜ、


耳子演じる光川
だって、私、私、


佐田原演じる真田
お前がお前でなくなっても俺はお前のことをお前だと思ってるよ、


佐田原
どういうこと?


耳子
好きなんでしょう、真田は光川のことが、


佐田原演じる真田
す、好きじゃねーよ、ばかいってんじゃねーよ、


耳子
あれ?


峰演じる藤田
光川さん、光川さんの演技は、本当にすごいよ、自分でなくなる程の演技してるってことでねーべか、


佐田原演じる真田
そうだよ、お前の演技がすごいってことだよ、続けよう、もっとお前の演技が見てえんだよ、


耳子演じる光川
真田くん、藤田くん、ありがとう、続けましょう、


佐田原演じる真田
どこからだっけ、


峰演じる藤田
アナリリスペンパルバーンの芝居にダメだしするところからですな、


耳子演じる光川演じるアナリリス
いくら鞭で打つのは芝居だからといって、もう少し頑張っていただかないとこっちも演じようがないじゃありませんか、


佐田原演じる真田演じるペンパルバーン
申し訳ありません、なにしろ、私、畑を耕し、家を建て、牛の世話をしてきた身ですので、演じるということに関して、したこともなければ見たこともないのであります、


耳子演じる光川演じるアナリリス
ごめんなさいね、厳しいことを言ってしまって、だけどアナタ、これは神々に見せる劇なのであるから、もう少し頑張ってもらわないと、私たち、永遠にこの洞穴から出られませんことですから、続けましょう、


佐田原演じる真田演じるペンパルバーン演じるウロボロスのベビー
ああ、イタイイタイ、止めてよ、止めてよ、ママ、その攻撃はひどく辛いよ、僕が何をしたって言うんだい、


耳子演じる光川演じるアナリリス演じるウロボロスのママ
変な欲望は捨てなさい、ベビーちゃん、形あるものは皆消え去っていくのですから、ベビーちゃん、ベビーちゃん、さあこっちへおいで、良い子だからこっちへ来なさい(ベシィ)


佐田原演じる真田演じるペンパルバーン演じるウロボロスのベビー
ああ、イタイ、イタイよ、ママ、行くよ、行けばいいのだろう、


耳子演じる光川演じるアナリリス演じるウロボロスのママ
この部屋にはあなたを入れたことがなかったわね、いいわ、あなたを今日から立派な大人と認めましょう、


耳子演じる光川演じるアナリリスが読むト書き
ウロボロスのママ、ウロボロスのベビーが入った部屋には、ウロボロスのパパの残骸。


佐田原演じる真田演じるペンパルバーン演じるウロボロスのベビー
ママ、ママ、ママ、これは何、ひどく臭うよ、ひどく臭うよママ、


耳子演じる光川演じるアナリリス演じるウロボロスのママ
さあ、あんたの父さんに挨拶なさい、


佐田原演じる真田演じるペンパルバーン演じるウロボロスのベビー
父さん、これが、この残骸が僕のパパなの、


佐田原
おいおいおいおい、急にどうした、急にエグいドラマ始まってますけど、


耳子
イカれた家族が描かれ始めましたね、


佐田原演じる真田
大丈夫か、この戯曲、めっちゃ変なシーン入ってきたぞ、


峰演じる藤田
んだべさ、怖いなー、怖いなー、


佐田原
怖がってんじゃん、


耳子演じる光川
死よ、死がここにあるのよ、劇の最大のテーマは死なのよ、


佐田原演じる真田演じるペンパルバーン
待ってください、なんですか、この戯曲は、いきなり死体が出てくるのですか、


佐田原演じる真田
ペンパルバーンも疑問を呈しているぞ、


耳子演じる光川演じるアナリリス
オホホホホホ、死体が出てきて何か不都合がおありですか?


佐田原演じる真田演じるペンパルバーン
神々に見せるんだろう、こんな穢れを見せて良いのか、


耳子演じる光川演じるアナリリス
死は穢れですか、ワタシ達は死にます、みんな、死にます、さあ、死んだらどこへ行くのでしょうか、わからないですねー、怖いですわねー、だけどみんな死ぬのです、そして大いなる魂へ帰っていくのです、死は穢れなんかじゃあありません、聖なるものですよ聖なるもの、ワタシは魑魅、


峰演じる藤田演じるぺレッサ
俺は魍魎、


耳子演じる光川演じるアナリリス、峰演じる藤田演じるぺレッサ
二人合わせて、魑魅魍魎、生きとし生ける世界から、取り残された魑魅魍魎、明るい世界を作ったのは誰、幸せな世を作ったのは誰、幸せな世にも関わらず、どうして人は死んでいく、死こそ幸せの象徴なり、死こそ聖なる象徴なり、神々がいればしかと見届けたまえ、ウロボロスのベビーとウロボロスのパパの対話を、


佐田原演じる真田演じるペンパルバーン演じるウロボロスのベビー
父さん、この残骸が、僕のパパなの、僕の父さんなの、


峰演じる藤田演じるぺレッサ演じるウロボロスのパパ
ベビー、お前はベビーかい、


佐田原演じる真田演じるペンパルバーン演じるウロボロスのベビー
父さん、父さん、生きているの、父さん、


耳子演じる光川演じるアナリリス演じるウロボロスのママ
そんな馬鹿な、父さんは死んだはずだわ、


峰演じる藤田演じるぺレッサ演じるウロボロスのパパ
いかにも、私は死んだ、ある猛吹雪の夜だった、狼が俺を襲った、俺は死んでたまるかと生きながらえようと狼を噛んだ、狼はキャンという声を出した、突然俺は狼が可哀想になった、キャンという響きが俺の体に響いた、俺の毒で狼は死ぬだろう、そして俺は不思議な気がした、俺は体に毒を持っているのにどうして毒がまわらないのだろう、俺は狼を殺した、だけども俺はここで死んだも同然だと思った、俺は自分を噛んでみようと思った、俺の死はここから始まった、しかし死とは終わりのないことだということを死にながらわかった、ベビー、生と死の遊戯をしようか、私たちは生きている者達と死した者達との戯れに劇をするんだ、ここに戯曲がある、


佐田原
戯曲だとーーー、


耳子
えええーーーー、



やばくない、


佐田原演じる真田
戯曲、え、戯曲まだ出てくるのか、


峰演じる藤田
劇中劇というのはややこしいものだなあ、


耳子演じる光川
これは、ちょっとややこしい劇中劇だなあ、


佐田原演じる真田演じるペンパルバーン
これは、なんだ、劇の中で戯曲を読むのか、


佐田原演じる真田
おお、ペンパルバーンも驚いてやがるぞ、


佐田原
おおおい、ペンパルバーンも真田もびっくり仰天だなこりゃあ、


耳子演じる光川演じるアナリリス
劇中劇と呼ばれるジャンルでござんす、


佐田原
なんで女郎言葉、


峰演じる藤田
なんで女郎が使う言葉使ってるですかね、


佐田原
藤田も同じこと言ってるだな、



佐田原止めるな、ややこしくなるから、


耳子演じる光川
ああー、ちょっと止めないで、お願い、続けて、入り込めなくなるじゃない、


峰演じる藤田
わんり、わんりい、


耳子演じる光川演じるアナリリス
それよりアナタ、わからないのはしょうがないけどいちいち劇を止めるのはよろしくないでござんすね、


峰演じる藤田演じるぺレッサ
まあまあ姉御、彼奴も初めてなんだから、大目に見てやろうぜ、


佐田原
ぺレッサって空気薄いよな、なんか、



止めるなよ、


耳子演じる光川演じるアナリリス
んもう、仕方のない、続けて、ぺレッサ、あなたのセリフの途中よ、


峰演じる藤田演じるぺレッサ
そうでげしたそうでげした、


峰演じる藤田演じるぺレッサ演じるウロボロスのパパ
生者と死者が交わる一時のために俺はここに蘇ったのだベイビー、正確に言うと蘇ったわけではない、一時的に残骸に魂を宿わせているのだよ、ベイビー、


佐田原
花輪くんみたいな喋り方になってきたな、


耳子演じる光川演じるアナリリス演じるウロボロスのママ
ねえ、パパ、パパは、完全、完全になったって認識でいいのかしら、


峰演じる藤田演じるぺレッサ演じるウロボロスのパパ
完全なんてものはこの世の中にはない、あるとすれば完全を装った不完全があるだけさ、さあ、生と死の遊戯を始めよう、タイトルは「愛の三角」、


佐田原演じる藤田演じるペンパルバーン演じるウロボロスのベビー演じる極除光
見る、愛を見る、我が償いを見る、我が業火を見る、見る、見る連ねる、我が弔いを連ねる、我が病を連ねる、見る、見るささくれる、我が指先がささくれる、我が祝言がささくれる、


佐田原
うおおお、意味わかんねえええ、


耳子演じる光川
ちょっと、止めないでって言ってるでしょ、


佐田原
ごめん、あまりにも意味わかんなくて、


耳子演じる光川演じるアナリリス演じるウロボロスのママ演じる天具櫂
愛、愛のしらべを知らしめず、恋は物のあわれなり、先々まで見通せる眼球あるか、時の漂白口惜して、天の道楽の仙のたらしめる、


峰演じる藤田演じるぺレッサ演じるウロボロスのパパ演じる道顎派
照らしますは三角の神殿、祭壇、儀机、闇運ばせしは、常緑の匙、波止場、戦いの鼓、


佐田原演じる真田演じるペンパルバーン演じるウロボロスのベビー演じる極除光
見る、愛を見る、横たわるを見る、ささくれだつを見る、ぐったりとした手足、死んだ眼差し、声の目論見、匂いの漂黒、


峰演じる藤田演じるぺレッサ演じるウロボロスのパパ
ベビー、ベビー、オウマイガットだよ、ベビー、もうちっと落ち着いて演じてみないか、君にとっての演技ってなんだ、


佐田原
ここに来てもダメだし、


耳子演じる光川演じるアナリリス
アナタ、さっきからなんでございますの、劇には流れってものがありますのよ、お分かり?


佐田原
すみませんだって、気になるんだもの、気になってしかたがないのだもの、


耳子演じる光川
気になるからってイチイチ流れ止めてたら始まんないじゃないのよ、もう、続けてよ、


佐田原
え、ごめん、さっきからチョイチョイ気になってたんだけど、俺、劇中人物と会話してない、ねえ?峰くん、


峰演じる藤田演じるぺレッサ演じるウロボロスのパパ
演技とは祈りだ、今ここから出発して宇宙の果ての果てまで広がる祈りだ、祈りには対象があるんだよわかるかい、ベイビー、君の演技には祈りの対象がないんだよ、


佐田原
あれ、峰くん?


佐田原演じる真田演じるペンパルバーン演じるウロボロスのベビー
パパ、パパ、パパ、僕には祈りの対象なんてわかんないよ、僕はまだまだ子供だよ、


佐田原
ちょっと待って、耳子くん、耳子くん?


佐田原演じる真田演じるペンパルバーン
おお、私はこのウロボロスのベビーに激しく同意する、演技というものを始めたばかりの私にわかるわけなかろうぞ、


耳子演じる光川演じるアナリリス
オホホホホホ、オホホホホホ、アナタの演技の最大の欠点を教えてあげましょうか、アナタ、これが劇中劇ってことを忘れていらっしゃらないかしら、つまりペンパルバーン、ペンパルバーンであるアナタが極除光を演じるのではないのですよ、ペンパルバーンであるアナタがウロボロスのベビーを演じ、そのウロボロスのベビーが極除光を演じる、言ってる意味がおわかり?そこには雲泥の差があるんでござんすよ、


峰演じる藤田
だから何で女郎言葉なんすか、


耳子演じる光川
だけど本当に言ってることわかるわ、



言ってることわかるわー、


耳子演じる光川
そもそもそもそもの話、言葉を読むってことはその言葉が体をめぐるってことなのよ、



リツイートしたいわ〜、


佐田原
待って待って、みんな、大丈夫?俺って俺だよね、


峰演じる藤田
言おうとしてることはわかるんでガンスが、実際やろうとすると難しいべんすね、


佐田原演じる真田
おい、光川、もう俺劇なんてどうでもよくてお前のことが好きなんだけど、


峰演じる藤田演じるぺレッサ
ガーハッハッハッハ、ここに来て愛の告白か、ペンパルバーンよ、お前はまだまだこの洞穴から出られんようだな、


佐田原
あれ、今俺、告白してた?


光川
ああー、だから止めないでよ、お願いよー、止めないでったら、続けて続けてー


真田
え、だって俺今告白したんだぜ、


アナリリス
私を演じてるのは光川楓であり、その光川楓を演じてるのが穴岩耳子なの、言ってる意味お分かり?


ぺレッサ
ガーッはははは、あんら、俺様はこんな喋り方だっただろうか、


極除光
触れる、触れるおののきの証、明かすは漂白の末尾、


ウロボロスのベビー
ママ、ママ、ママ、僕はママに祈るよ、完全を信じるママへの祈り、それが演技ってことだろう、



だけど一筋縄にはいかないのが演技って奴で、人それぞれ演技に対する価値観は違っていいと思うってのが俺の意見、


佐田原
あ、峰くん、今、君、峰くんだよね?


峰演じる藤田
んだべさ、おらわ、ウロボロスのパパだべよ、


耳子演じるアナリリス
例えば私が鶏を演じたとするでしょ、


ペンパルバーン
あああああ、焦らさないで、焦らさないで教えておくんなさいませんか、


佐田原
あれ、今、俺誰だっけ、



あれ、今俺、誰だっけ、



あら、今私、


ウロ
誰なんだろう、


佐田
ママ、ママ、ママの声だ、


ウロボ
つまりに風景というものが自分という抽象物に入り込んでくる瞬間ん、それが演技って、



オホホホホホ、





どうなってん



稽古場代貰ったっけ?



そんなこと急に言われたって、私、



祈り



こと



あ、







終わり