新頭町戯曲集

複数人の作家で作られる戯曲によるエセメタバース

頭町戯曲集について1 〜劇作家Z氏へのインタビュー〜

登場人物
Z氏・・・自称天才劇作家
インタビューアー・・・囲碁が趣味


頭町戯曲集について1 〜劇作家Z氏へのインタビュー〜


1幕


インタビューアー
今回は、演劇界において、演劇界のみならず、小説界にも芸能界にもアート界にもとどまることを知らずに、はたまた実社会においても何の実績を持たない自称天才劇作家Z氏にインタビューを行っていきたいと思います。
Zさん、よろしくお願いします。


Z氏
よろしく。
愛を持って応えます。


インタビューアー
あ、ありがとうございます。
愛のあるお応え、期待しています。
それでは、まずですね、何だかZさんが新たなプロジェクトを始めると事前アンケートにおいて伺ったのでありますが、こちらの方、どういったプロジェクトになるのか、ご説明の方、お願いできますでしょうか?


Z氏
もちろん、餅の論、略して餅論。
今日はそのために来たと言っても過言ではないからね。
ざっと説明していこうではないか。
新たな戯曲集を作ろうと考えています。
タイトルは「頭町戯曲集」
うーん、どうだろう、ねえ、君どう思います?頭町戯曲集って正直、この名前どう思います?良いと思う?


インタビューアー
え、あ、そーうです、ね、うーん、ま、あのー、ちょっと、ちょっとと言いますか、あのー、


Z氏
あ、ダメ?ダメ系の反応だよね?


インタビューアー
いや、違います違いますます、ダメではないですダメではないです、良いと思います良いと思うんですけど、ちょっと内容の方もまだ伺ってませんし判断できないと言いますか。


Z氏
あー、ま、そうだよね、内容の話聞かないとね、タイトルだけ聞かされても分かんないよね、そりゃそうだな、そりゃあそうだわ。納得。


インタビューアー
それでは、内容の方についてお聞かせくださいますでしょうか。


Z氏
えー、内容としましてはね、ま、内容というか、まずはコンセプトね、コンセプトなんだけれども、コンセプトって言葉の意味よくわからないんだけど、それっぽい意味合いで使ってるけど大丈夫かな?


インタビューアー
大丈夫です。コンセプト、どうぞ。


Z氏
コンセプトとしましてはですね、あれだ、俺思うんすよ。いや、私ね、思うんです。最近。
劇作家って最終形態しか求められてないと言いますか。
つまり戯曲ね。
戯曲って完成形態じゃないと発表できないというか、うーん、なんだろ、アレなんですよね、音楽とかって、この曲ひくぞおーってことをね、なくても適当にギター弾いたり歌ったりして遊べるじゃない?
こういうのが戯曲にもあってもいいよなーって思っているわけだ。
こう、デッサンみたいな、殴り書きみたいな状態の物を書いても良いと言うか、書いた方が良いんじゃないかって思い始めてるわけだ。
別役実さんのコントのレッスンて本に書いてた書き方なんだけれどね、
道具づくしだとか、虫づくしだとか、づくし系のエッセイみたいな本を別役さんは出していて、内容的には世の中に存在してないんだけどありそうな架空の道具だとか虫だとかをさもありそうに説明していて、いかに巧みな嘘をつくか、本当と思える嘘をつくか、そういうエッセイみたいな本を何冊か出しています。
それが何かって言うと、実はそのづくし系の文章は、本編の戯曲を書く前に助走として書いた結果らしいのね。
つまり別役さんは本編書く状態になるまでの助走として、アップとして、嘘を書いているわけです。それから本編の戯曲に取り掛かると全然感覚が違うらしいのです。良いらしいのです。
へー、そうなんだー、ってね、なるでしょう?


インタビューアー
はー、そうなんだー、ってなりますね、あー、なるほど、つまり別役さんはづくし系の文章それ自体を書こうとしていたというより、もちろん内容としてはこういう内容を書こうだとか考えていたかもしれませんが、アップとして、つまりスポーツ選手における軽いランニングやら柔軟運動みたいなものとして書いていた、というわけですか。それから試合に挑んでいる、みたいなイメージでしょうか?


Z氏
そうなんです、その通り、野球選手にとっての素振りだとか、サッカー選手の、なんだっけ、こう、足で、ボール跳ねさせるやつなんだっけ、あ、、、なんだっけ、


インタビューアー
リフティングですか?


Z氏
そーう!リフティング、リフティングリフティング!
そうそう、リフティングみたいな要素もあるんだと思うんですよね。
つまり劇作家もリフティングだとか素振りした方が良いに決まっているでしょう、って思うわけだ。
だけどねえ、だけどさあ、ねえ、困っちゃうよね。


インタビューアー
え、なんですか、何が困っちゃうんですか。


Z氏
僕は小学校時代野球部で、で、なんか努力しなきゃいけないわけじゃない。
同級生がさ、同級生のマッチってのがいたんだけど、マッチ今まで下手だったのに急にボンボン打つようになってさ、どうしたんだどうしたんだ、って、マッチすげーな最近、ってなってね、やっぱり聞くと努力してるって、毎日素振り何十回何百回してるって、言うわけです。
よーし、分かったと、おいらもしてやんぞって、おいらも毎日素振りしてめっちゃ打てるようになってやんぞーってやりはじめるんだけど、本当に僕は続かないの。十回でいいから毎日やろうって思っても続かない、すぐやめちゃう。
いやー本当すごいよね、マッチ、マッチ本当すごかったもんねー、めっちゃ打ってたもんねー、いやー、本当、最近本当にガチで思うけど、スポーツ選手だとか、本当にすごいよね、どんだけ努力してるのーって、スポーツ選手だけじゃないよね、世の中で活躍してはるすごい人たちは本当にすごいと、身に染みて、肌身に染みて感じますわ。


インタビューアー
え、あのう、何の話でしょうか。


Z氏
察してよ、僕の辛い過去を。
察してよ、僕の努力ができない日々を。
察してよ!


インタビューアー
察しました察しました、察しましたよ。
つまりZ氏は努力ができないと。


Z氏
そうなんです。


インタビューアー
努力してみても続かないと。


Z氏
その通り。ちゃらんぽらんなんです。どうすればいいでしょうか?


インタビューアー
ええー、と、何でしょう、私、相談されてます?人生相談みたいになってません、今?


Z氏
だって解決できることなら解決したいじゃない。


インタビューアー
え、あのー、今回の新プロジェクトについて、


Z氏
ああ、


インタビューアー
頭町戯曲集について、


Z氏
ああ、ああ、


インタビューアー
お伺いしたいのですが。


Z氏
ああ、そうだね、本当にそうだね、君の言う通りだ、いやね、全然あのー、あれしてるわけではなくて、ちゃんと繋がってるからね、まったく関係ない話してたわけではなくて、いや、面目なし面目なし、あのー、ね、つまり、こういうことあんまり言いたくないんだけど、僕は努力ができないらしいのです。オウマイゴット!オウマイゴットすぎません、ヤバくないですか、え、本当にヤバくない、この自白。


インタビューアー
え、ちょっと、あのー、涙目になってません?


Z氏
うん、ごめん、ちょっと泣きそう、なんか俺の人生なんだったんだろとか思えてきちゃった。


インタビューアー
あ、いやー、その、辛い部分、はしょって。
新プロジェクトについてざっくりと聞きたいだけですので、そのー、人生における辛い部分については、はしょっていいから、ね。


Z氏
やんなっちゃうよ!
マジで!
人生における辛い部分がこれ?
え、ショぼくない?
いや、あるよあるよ、人生における辛い部分もっとあるよ!
なんか、人間関係に悩んだりしてたよ!
俺だって、人間関係で辛いなーって思ったこととかあったよ!たくさん!
どうよ!
君、どう?君、君のー、人生における辛い部分って何よ?


インタビューアー
いや、私はー、あの、いや、今はね、新プロジェクトについて、頭町戯曲集について、あなたのお話を伺っているわけだから、


Z氏
え、聞かせてよ、君の人生における辛い部分聞かせてよ、ねえ、


インタビューアー
ええと、私の人生における辛い部分は関係ないのでは、、と思いますが、


Z氏
え、あるよ!
あるじゃない!
関係あるよ!
めちゃくちゃ関係あるよ!


インタビューアー
え、関係あるの?


Z氏
あるよ!
あるじゃない!
今まで何聞いてたんだ!


インタビューアー
え、だって、え、関係なくない、私の人生。
え、だってあなたの戯曲集でしょう、私は劇作家でもなければ、あなたと演劇活動をしているわけではありませんよね?


Z氏
はい、


インタビューアー
よね、そうですよね!


Z氏
はい、餅の論です。


インタビューアー
関係、あります?
私の人生における辛い部分。


Z氏
あるよ!
何言ってんだよ!
他人行儀かよ!他人事かよ!


インタビューアー
ええー、だって他人だもん。


Z氏
君、他人って言葉の意味分かってる?


インタビューアー
他人は、他人でしょ、分かりますよ。


Z氏
君本当に分かってるって言える?他人だぜ。


インタビューアー
分かってますよ、他人でしょ、他人は他人でしょう。


Z氏
他人っていうのは他の人って書くんだぜ、分かってる?


インタビューアー
分かってますよ、


Z氏
自分っていうのは自ずと分けるって書くんだぜ、知ってる?


インタビューアー
へえー、そうか、知ってたんだけど知りませんでしたね、はあー、そうか、


Z氏
身内ってのは、身の内側って書くんだぜ、内輪ってのは、内側の輪っかって書くんだぜ、分かってる?私ってのは、渡すんだぜ、己をさ、川を渡すようにさ、物を手渡すようにさ、己を渡すってのが私なんだぜ、相手ありきの言葉なんだぜ、私ってのはね、決して、私は私として存在していないんだぜ、意味分かる?


インタビューアー
はあ、なんとなく。


Z氏
お前は俺の他人か?


インタビューアー
催眠術かなんかかけようとしてます?


Z氏
もういいよ。


Z氏、退室する。


インタビューアー
ああ、ちょっと!Zさん、Zさーん。


インタビューアー、追いかけて出て行く。