新頭町戯曲集

複数人の作家で作られる戯曲によるエセメタバース

劇作家Z氏とインタビュアー君による公開談義3 藤子・F・不二雄が演じる宇宙人の目と坪内逍遥が演じるロミオとヂュリエットについて。

劇作家Z氏とインタビュアー君による公開談義3 藤子・F・不二雄が演じる宇宙人の目と坪内逍遥が演じるロミオとヂュリエットについて。

 

★登場人物紹介
Z氏、自称天才劇作家
インタビュアー、ジグソーパズルが趣味
 
Z氏
どうも、自称天才劇作家Z氏です、正直申し上げますと自称で天才とか言うの恥ずかしいんだけど、他称を誰もしてくれないから自称で言ってみてますZ氏です。そうして、こちらは、
 
インタビュアー
どうも、毎度おなじみインタビュアーです、私もそろそろ名前が欲しいという、なんと言いますか、根源的な問いかけみたいな悩みを持ってますが、どうですか、そろそろ私に名前つけてくれたって良くないですか?
 
Z氏
うーん、そうねえ、
 
インタビュアー
私以外ほとんど名前ありますよね、この戯曲集の登場人物たち、
 
Z氏
うーん、そうなんだけどね、つまりさ、名前がないというのは、あれでしょ?役割だけを割り振られてるとかいう、あれでしょ、個人ってやつが抜き取られてなんちゃらっていう、あれでしょ、
 
インタビュアー
そんな戯曲ちょっと勉強した人が言うやついいんですよ、こっちとらこの戯曲集出来てから存在してんのになんで名前ないのよ、って、この戯曲集も出来てからいつの間にやら一年経ってましたよ、
 
Z氏
へー、そいつはすごい、いやあ、思えばいっぱい書いてきたなあ、ちなみにどれくらい書いたの?
 
インタビュアー
今、十七です。
 
Z氏
へー、頑張った頑張った、
 
インタビュアー
少ないですよ、二週間に一回書く予定だったでしょうに、
 
Z氏
しょうがないでしょうに、こっちだってプライベートも仕事も忙しいのだから、
 
インタビュアー
信念がないんですよ、あなたいつも、
 
Z氏
ほーう、信念、ね、テレテン、っ馬鹿にしないでよー、テレテテーテテー、どっちのせいよー、テレテテーテテレテレテレッテー、
 
インタビュアー
ちょっと急に山口百恵歌わないでくださいよ、
 
Z氏
阿木燿子ってすごくない、
 
インタビュアー
話逸らさないでください、
 
Z氏
話逸らしてないよ、馬鹿にしないでよ、どっちのせいだよ、って言ってるのだよ、
 
インタビュアー
どっちのせいもなにも、全部あなたのせいですよ、
 
Z氏
ほーう、あんた、あんたにちょっとでも責任がないって言ってるのかい、
 
インタビュアー
言ってます、書いてるのはあなたなので、私関係ないんじゃないですか、
 
Z氏
ズチョンッ、デッデッデッデッデデン、あんた、あの子のなんなのさ、
 
二人
港のヨーコよこはまよこすかー、
 
インタビュアー
いやいや、なんで宇崎竜童出てくるんですか、
 
Z氏
港のヨーコよこはまよこすかー、
 
インタビュアー
歌い終わってくださいよ、
 
Z氏
カラオケ行きてー、
 
インタビュアー
カラオケ、行ってないですね、全然、
 
Z氏
君、カラオケ、何歌うの?十八番、十八番は、何?
 
インタビュアー
十八番、ですか、十八番ー、なんでしょうね、吉田拓郎とかでしょうか、
 
Z氏
吉田拓郎、渋いねー、吉田拓郎、の、何?
 
インタビュアー
落陽とか、好きですねー、
 
Z氏
みやげにもらあったーあー、サイコロ二つー、
 
二人
手の中でふればーあー、またふりーだしにー、
 
インタビュアー
戻るー、旅ーにー、陽がしずーんでーいくー、
 
Z氏
ふうっ、いよっ、
 
インタビュアー
いよっ、じゃあなくて、え、話逸らさないでくださいよ、
 
学生A
先生、そろそろ授業始めてもらっていいでしょうか、
 
Z氏
ああ、そうだったそうだった、ええと、ということで、今日もここ、頭町大学から講義を始めていきたいと思います。
 
インタビュアー
今日は何をするんですか、
 
Z氏
今日は真面目にワークショップをしましょう。
 
インタビュアー
おおー、素晴らしい、ちなみに何を、
 
Z氏
ダダン、劇作ワークショップです、パンパカパーン、
 
インタビュアー
おおー、素晴らしいですよ、頭町戯曲集も一年経って、やっとまともになってきましたね、
 
Z氏
あのう、前回、目の話しましたよね、
 
インタビュアー
目の話、してませんけど、
 
Z氏
あれ?してなかったっけ、前回した目の話、覚えているよーって人いる?
 
学生、無言、
 
Z氏
あれ、してないのかな、
 
インタビュアー
してませんよ、
 
Z氏
じゃあ藤子・F・不二雄の話したよね、
 
インタビュアー
してませんって、
 
Z氏
藤子・F・不二雄の話はしたよ、絶対したよ、ねえ?
 
学生C
藤子・F・不二雄の話はしようとしたけど、せずにカーリング娘とかクレヨンしんちゃんの話に乗っ取られました、
 
Z氏
あー、そうか、すごいね、この人、
 
インタビュアー
よく覚えてますねー、
 
学生C
ええ、ちゃんとノート取ってますので、
 
インタビュアー
え、こんなちゃらんぽらんな授業、ノート取ってるんですか?
 
Z氏
君君、ちゃらんぽらんとはなんだね、
 
インタビュアー
いえ、失礼しました。
 
Z氏
じゃあ、藤子・F・不二雄の話ね、つまりさ、演技によって言葉が生まれるとした時にですよ、演技を変えれば言葉も変わるってことを僕は言ってきたわけだけども、演技ってなんなのよって話じゃない、
 
インタビュアー
それをー、古今東西の演劇に関わる人々は考え続けていると言っても過言ではないのでは、
 
Z氏
そうよ、だから僕ももっともっとちゃんと演技について勉強しなければいけないと思っていたわけよ、
 
インタビュアー
ええ、うん、頑張ってください、
 
Z氏
あ、どうもありがとう、頑張ります。で、ですよ、つまり演技ってのはフィルターのわけよ、
 
インタビュアー
ん?フィルター?
 
Z氏
こう、なんか、あって、なんかがあるのになんかかましてさ、なんか新しいの別の物が出てくるわけでしょ、このう、かましてるやつが演技ですよ、
 
インタビュアー
ああ、かました結果、別のものが生まれるって意味ですね、
 
Z氏
そうそう、
 
インタビュアー
それで、そのかましてるもののことを、Z氏はフィルターと言ってるわけですね、
 
Z氏
そうそう、物分かりいいな、今日の君は、
 
インタビュアー
いつも良いんですよ、
 
Z氏
それでですよ、もうあのう、どこにも寄り道せずに一直線よ、一直線に藤子・F・不二雄の短編漫画の話に行くね、つまり、だよ、藤子Fの短編に「宇宙人レポートサンプルAとB」ってのがあるわけです、小学館文庫の「藤子・F・不二雄異色短編集2気楽に殺ろうよ」の中に入ってます、
 
インタビュアー
聞いたことないですね、
 
Z氏
藤子Fの短編とか知ってる?
 
インタビュアー
いやあ、漫画、あまり読まないので、
 
Z氏
いやー、面白いよー、ミノタウロスの皿とか、最高よ、僕も人に教えられて知ったんだけど、
 
インタビュアー
へー、今度読んでみます、
 
Z氏
ミノタウロスの皿さー、すごい良いんだよね、なんか地球人の男が、宇宙船故障して、知らない星に不時着するの、
 
インタビュアー
はあ、
 
Z氏
それでー、なんか、その星は、牛の顔した奴らが牛耳ってる星で、人間が家畜として飼われているわけよ、
 
インタビュアー
もう面白そう、
 
Z氏
ああ、やめとこう、ミノタウロスの皿の話はこの辺でやめとこう、
 
インタビュアー
ええー、なんでですか、
 
Z氏
僕が今しなきゃならないのは宇宙人レポートABについてだからよ、
 
インタビュアー
ああ、そうでしたそうでした、でもそこまであらすじを説明してるのだから、最後まで聞きたいなあって気もして、
 
Z氏
いや、今日は曲げません、時間ないから、今日は僕、曲げないよ、一直線に宇宙人レポートABについて話すよ、
 
学生一同
ブー、ブー、ブー、ブー、
 
Z氏
な、
 
インタビュアー
ブ、ブーイングですよ、
 
Z氏
そんなにも、そんなにも君たちは、ミノタウロスの皿について聞きたいのかね、
 
学生C
先生、私たちはもう、ミノタウロスの皿の耳になってしまいました、ミノタウロスの皿について聞くための耳になってるんですよ、
 
Z氏
なるほど、君、その言葉遣い面白いよ、メモしときたまえ、
 
学生C
は、はい、ありがとうございます、
 
Z氏
つまり、ハンバーガーの口になってるとは言うじゃない、
 
インタビュアー
言いますね、お昼何しようー、って時使いますね、
 
Z氏
ミノタウロスの皿の耳になってるって、ねえ、
 
インタビュアー
ええ、
 
Z氏
すごいぞ、君、
 
インタビュアー
ええ、本当に、ノートも取ってるし、
 
Z氏
だねだね、ノートも取ってるし、すごいよ、君は、もうあれよ、もう、あのう、、最優秀生徒よ、
 
インタビュアー
ええー、この段階で発表して良いんですか、最優秀生徒、まだ授業二回くらいしかしてませんよ、
 
Z氏
いや、もう君は、最優秀、決定です、君、名前は、
 
学生C
宝田明です。
 
Z氏
 
インタビュアー
あの宝田明ですか、
 
Z氏
あの宝田明なわけないじゃない、あの宝田明がなんで僕の講義受けてるのよ。
 
インタビュアー
そうですね、顔も年齢も全然違いますね、
 
学生A
ちょっと、先生、本当にそろそろ講義してくれませんか、
 
Z氏
お前、なんだよ、いつもいつも茶々入れてきやがって、
 
インタビュアー
まあまあ、大人気ないですよ、
 
Z氏
お前、なんなんだ、お前のことを最底辺生徒として、発表してやる、
 
インタビュアー
Z氏、
 
Z氏
なんだね、
 
インタビュアー
Z氏にそんな権力ありません、Z氏に最優秀とか最底辺とかを決定する権力ありません、
 
Z氏
え、ないの?あると思ってた、
 
インタビュアー
ありません、心の中だけで、自分の心の中だけで決めといてください、
 
Z氏
あ、うん、じゃあ、そうする。え、何ノート取ってるの?
 
学生C
あ、いえ、このくだりを、
 
Z氏
このくだりをメモしても何にもならないよ、
 
学生C
いえ、一応、
 
Z氏
一応じゃないよ宝田くん、最優秀とか最底辺とか全く講義になってないくだりをノート取ってどうするの、
 
学生A
だから早く授業始めろって言ってんだろが、
 
Z氏
だから今からやるって言ってんだろうが、
 
学生D
喧嘩はやめてください、喧嘩は、やめてーー、
 
インタビュアー
え、誰ですか?
 
学生A
ごめん、つい、カッとなっちまった。
 
学生D
別に、わかってくれたらいいけど、
 
Z氏
インタビュアー君インタビュアー君、
 
インタビュアー
なんですか、
 
Z氏
あの二人、付き合ってるよ、絶対付き合ってるよ、
 
学生A
な、何言ってんだよ、お前、
 
Z氏
付き合ってんだろう、お前たち、ヒューヒュー、
 
インタビュアー
あのねえ、Z氏、
 
Z氏
え、なに、
 
インタビュアー
あなた、もう何歳になったんですか?
 
Z氏
え、もうちょっとで、二十九歳だけど、
 
インタビュアー
付き合ってる付き合ってないでヒューヒュー言う歳ですか、
 
Z氏
え、違うかもしれない、
 
インタビュアー
でしょう、謝って、
 
Z氏
え、俺、
 
インタビュアー
謝って、早く、
 
Z氏
うん、ごめんなさい。
 
学生A
いえ、すみません、私も大人気なかったです。
 
学生D
喧嘩、やめてくれたのね、嬉しい。
 
学生A
お前のためじゃねーよ、
 
インタビュアー
じゃあ、ね、そろそろ講義、始めましょう、
 
Z氏
あ、そうだった、講義一直線に進めないといけなかったのに、変な寸劇かましちゃったよ、いや、だからね、ええと、なんだっけ、
 
インタビュアー
ミノタウロスの皿の話でしょう、
 
Z氏
ミノタウロスの皿はもういいのよ、宇宙人レポートABの話しなきゃなんないの、あ、いや、待った。
 
インタビュアー
なんですか、
 
Z氏
宝田明君、君はやっぱり最優秀生徒かもしれない、
 
え、なんでですか、
 
Z氏
それはこれから話す事柄を聞けば自ずとわかることです、では始めます。
 
インタビュアー
よろしくお願いします。
 
Z氏
宇宙人レポートABの話ね、あと、ポイズンガールバンドってお笑いコンビの話と夏目漱石の話と、ま、探せば色々あるのだけど、実は前回の講義で話したかったんだけど、どうやら話せていなかったぽいので話すとですよ、つまり、「宇宙人レポートサンプルAとB」ってのは、藤子・F・不二雄が作で、画は小森麻美さんっていう少女漫画チックな絵で、それも面白さを倍増しているんだけど、内容としては、宇宙人が人間を観察してるっていう漫画なわけよ、人間はこう歩くとか、なんか布を身につけてるとか、グループに所属しているとか、宇宙人から見た人間の生態をタイトル通りにレポート、報告するわけですよ、そして、だんだんわかってくるんだけど、明らかに日本っぽくないし、現代ぽくないし、なんらかの物語が進んでいて、あ、これ、ロミオとジュリエットだってわかるわけ、ロミオがサンプルAとして観察されていて、ジュリエットがサンプルBとして観察されているわけよ。
 
インタビュアー
ほえー、ロミオとジュリエット宇宙人視点版というわけですか、
 
Z氏
斬新でしょう、
 
インタビュアー
斬新ですね、
 
Z氏
いや、これ、本当にすごいと思うんだけど、僕が一番惹かれたのはセックスシーンの描写なんですよ、
 
インタビュアー
セックスシーンの描写、そんな刺激的なものここで発表して良いんですか、
 
Z氏
良いのです、面白いから。セックスシーンの描写がこちら、
 
“外皮を取り去った両者の体には相違点がある。”
 
Z氏
外皮ってのは、この宇宙人、我々の衣服のことを外皮だと思っています。
 
 
“外皮を取り去った両者の体には相違点がある。
他のあらゆるサンプルについてもこの相違点は認められた。
種族の違いか?それとも単なる個体差か?
ともあれAとBはその相違点を奇妙な形で利用しあったのである。
この行為は相求める両者の欲求の帰結であったらしい。AもBも深い充足感に満たされた。
相違点の利用は夜中 厭くことなくくり返された。”
 
Z氏
以上がセックスシーンの描写であります。
 
インタビュアー
そ、相違点の利用、
 
Z氏
すごいでしょう、
 
インタビュアー
すごいですね、我々、セックスセックス言ってますけど、突き詰めて考えたら相違点を利用してるだけなんですね、
 
Z氏
そうよ、ま、男女の場合によるけど、
 
インタビュアー
これ、原作のロミオとジュリエットはどんな感じなんですかね、
 
Z氏
え、どうなんだろう、えー、面白いこと言うね、ちょっとアレだね、ロミオとジュリエット今持ってないけど、あ、アレだ、坪内逍遥訳ならKindle入ってるわ、
 
インタビュアー
坪内逍遥訳、なんでそんなのKindle入ってるんですか、
 
Z氏
ええーと、ま、もちろん、原作ではもちろんだけどセックスシーンは描写していないよね、いのうとや?って、もう行くの?って朝になる直前ぐらいでロミオに呼びかけるくだりで、あー、夜はお盛んだったんですねとなんとなくわかるわけだ。状況的には対立するモンタギュー家とキュビレット家とがあって、ロミオとジュリエットは惹かれあってるんだけど、ロミオが親友を殺されてブチ切れて、ジュリエットのいとこのチッバルドを殺してしまうわけ。で、ロミオ逃げなきゃいけないんだけど、逃げる前に一晩だけジュリエットと会う機会がなんだかんだでできて、そろそろ一晩明けそうーっていうシーンです。
 
インタビュアー
なるほど、いのうとや?坪内逍遥訳も坪内逍遥訳で中々面白そうですね、
 
Z氏
お、なんかその朝のシーン、対応してるかもしれんぞ、宇宙人レポートにもそのシーンあるわ、並べてみるか。以下ロミオとヂュリが坪内逍遥訳、サンプルAとBが宇宙人訳となります。
 
 
“ヂュリ 
去うとや?夜はまだ明きゃせぬのに。怖ってござるお前の耳に聞えたは雲雀ではなうてナイチンゲールであったもの。夜毎に彼處の柘榴へ來て、あのやうに囀りをる。なア、今のは一定ナイチンゲールであらうぞ。“
 
”サンプルB 
ちがうあの大気振動は昼行性飛行小型生物によるものではない。あれは夜行性飛行小型生物のものである。“
 
Z氏による適当現代語訳 
行かないで、まだ、朝じゃないわ、あなたの耳に聞こえたあの鳥の声はひばりじゃなくてナイチンゲールよ、いつもここへくるの、ナイチンゲールだからまだ夜よ、と、つまり朝になると身を隠さなければならないために行ってしまうロミオに向かって、まだ朝じゃないまだ一緒にいたいーって言ってるわけですね。続けます。
 
 
”ロミオ 
いや〳〵、旦を知らする雲雀ぢゃ、ナイチンゲールの聲ではない。戀人よ、あれ、お見やれ、意地の惡い横縞めが東の空の雲の裂目にあのやうな縁を附けをる。夜の燭火は燃え盡きて、嬉しげな旦めが霧立つ山の巓にもう足を爪立てゝゐる。速う往ぬれば命助かり、停まれば死なねばならぬ。“
 
”サンプルA 
事実と相違する。遠距離上方を受光せよ。分裂していく浮遊水滴集団をふちどる朝の光を ただちにこの位置から移動しなければ生命活動停止あるのみ。“
 
Z氏による適当現代語訳 
いや、違いますよ、と、空を見てごらん、と、雲を縁取ってるのあれなんやねん、朝日でしょうに、どう見ても、早よ行かな、わて、死んでまうがな、っていうように、もう朝だから、行かないとだめなのよってヂュリを諭しているわけですね、そして、多分次のジュリエットのセリフ一部分を宇宙人レポートではカットしていて、ロミオが続けます。
 
 
“ロミオ 
捕はれうと、死罪にならうと、恨はない、卿の望とあれば。あの灰色は朝の眼で無いとも言はう、ありゃ嫦娥の額から照返す白光ぢゃ。また吾等の頭の上で大空高う鳴響くあの奏樂も、雲雀の聲では無いと言はう。去にたいよりも此處に居たいが幾層倍ぢゃ。さ、死よ、來れ、喜んで迎へう!それがヂュリエットの望ぢゃ。さ、戀人、どうぢゃ?もっと話さう。朝ではない。”
 
“サンプルA 
それもよい 光は衛星からのものと仮設する 大気振動は夜行生物のものと仮設する。Aも移動したくはない。現状の継続こそ望ましいのだ。”
 
Z氏による適当現代語訳 
ま、死んでもええかな、お前さんの望みなんやったら、あの朝日に見えるんは月の光なんかもしれんなあ。ほんで、さっきのあの鳥もひばりじゃなくてナイチンゲールや。僕もどっか行くよりもここにいたいもん、めっちゃここにいたいもん。じゃあ死ぬか、ジュリエットもそれを望んでるんやし、オッケイオッケイ、朝じゃない朝じゃない、話そうぜー、マシンガントークしようぜー、っていう具合にここにいてくれーってなってるヂュリを脅す作戦に出るというわけです。
 
 
“ヂュリ 
いや、朝ぢゃ、朝ぢゃ。速う去しませ、速う〳〵!聞辛い、蹴立たましい高調子で、調子外れに啼立つるは、ありゃ雲雀ぢゃ。雲雀の聲は懷しいとは虚僞、なつかしい人を引分けをる。蟇と目を交換へたとは事實か?ならば何故聲までも交換へなんだぞ?あの聲があればこそ、抱きあうた腕と腕を引離し、朝彦覺す歌聲で、可愛しいお前を追立てをる。おゝ、速う去しませ、だん〴〵明るうなって來る。”
 
“サンプルB 
いや朝だ あの不快な大気振動は昼行生物のもの。時間を消費せず移動せよ。光量が増大してくる。”
 
Z氏による適当現代語訳
いーやーだー、朝です朝ですー、ロミオに死んでほしくないですー、認めますー、朝ですー、はい、あの不快な声はひばりの声ですー、調子外れったらありゃしない、ひばりの声は懐かしいとか嘘やろ、絶対、人と人ひきさいといて何言ってんねん、ボケが、って、坪内逍遥訳だとここで多分なんか寓話かなんかのモチーフによるなんかが多分語られて、早く行って、朝になっちゃうから行って早く早くって急きたてて、ロミオは去っていくわけです。あー疲れた、、
 
インタビュアー
お疲れ様です。
 
Z氏
え、頑張ったくない、僕?
 
インタビュアー
ええ、頑張りました。
 
Z氏
もっと褒めて、
 
インタビュアー
すごいすごい、
 
Z氏
もっと愛を込めて褒めてよ、
 
インタビュアー
待って待って、この面白さの熱が冷めないうちに振り返りましょうよ、
 
Z氏
あ、冷めたくない、確かに冷めたくない、え、どこが面白かった?
 
インタビュアー
いやあ、もう、そりゃ、全部と言いたいぐらい面白かったです。まず、宇宙人は声のことを大気振動として捉えてますよね、
 
Z氏
捉えてるね、
 
インタビュアー
雲は浮遊水滴集団、死ぬことを生命活動停止、鳥のことを夜行性か昼行性かでしか捉えていないってのも面白いですね、
 
Z氏
そうなんです、つまり、宇宙人の世界にない言葉なのよ、雲雀とかナイチンゲールとか、声とか月とか雲とか、
 
インタビュアー
あー、
 
Z氏
宇宙人の世界にない言葉だから、宇宙人が把握できる、それを含んだ意味のある言葉でしか語れないわけだ。大きい意味の言葉じゃないと捉えられないのよ、宇宙人、だから月は衛星になるし、雲は浮遊水滴集団になるし、ナイチンゲールとか夜行性飛行生物と言われるわけ、
 
インタビュアー
ほほーう、これはすごい発見ですね。そして、普通にシェイクスピアの朝にしたくないがために鳥の声を雲雀だと認めないこのシーン普通に面白いですね。
 
Z氏
そうそう、もっとちゃんとした現代語訳つけたかったね、坪内逍遥訳も面白くないかい、
 
インタビュアー
面白い、坪内逍遥訳もはまっちゃいそうですね、なんだか逆に可愛いですよね、じゃ、じゃ、言ってる感じとか、
 
Z氏
でしょ、つまり、ね、このことが言いたいがために宇宙人レポートを出したわけだけども、ここにある言葉は宇宙人の目を通して出てきた言葉なのよ、そして坪内逍遥の目を通して出てきた言葉なのよ、
 
インタビュアー
あー、
 
Z氏
これがフィルターなんですよ、
 
インタビュアー
あー、そこと繋がるのか!!
 
Z氏
藤子・F・不二雄ロミオとジュリエットを宇宙人の目を持って演じたのが、この宇宙人レポートサンプルAとBというわけです。坪内逍遥が結構昔の日本人の目をもって演じたのが坪内逍遥訳のロミオとヂュリエットなわけ。
 
インタビュアー
なるほど、
 
Z氏
宇宙人の目を通してだから性行為のことを互いの相違点を奇妙な形で利用しあったとかいう奇妙な言葉が生まれるわけです。これはかなり劇作に活かせる目の使い方であると思わないかね、
 
インタビュアー
お、思います、す、すごい、こ、講義っぽい、講義っぽいですよ、Z氏、
 
Z氏
そうかい、ありがとう、サンクス、
 
インタビュアー
いやー、成長しましたねえー、
 
Z氏
サンクスサンクス、褒め称えてくれ、
 
インタビュアー
で、ワークショップは?
 
Z氏
ワークショップは、ちょっと待って、ここからポイズンガールバンド夏目漱石とできたら俳句とかについて喋りたいのよ、
 
インタビュアー
もう任せます、今日のZ氏は一味違いますよ、前半のちゃらんぽらんが嘘のようです。
 
Z氏
じゃあ、ま、ちょっと、休憩でー、
 
インタビュアー
お疲れ様でーす、
 
  休憩入る。