新頭町戯曲集

複数人の作家で作られる戯曲によるエセメタバース

12月のこいびと

12月のこいびと

 

★登場人物

 

ちづる・・・好き嫌いがあまりない

ゆう ・・・ラーメンが好き

 

 

*****

 

ちづる 今日は来てくれてありがとう。

ゆう うん。

ちづる ちょっと心配だったっていうか、やっぱり来てもらえないかもって。

ゆう ああー、そう、そっか。

ちづる うん。

 

 

ちづる あ、最近、どう?仕事とか、忙しいの。

ゆう ああ、まあまあかな、先月まで大きい現場があったからあんま休めてなかったけど。今は普通に定時であがってるし。

ちづる そうなんだ。

ゆう うん……。あー、ちづるは?

ちづる 私は特に、変わってないかな、あ、でも、移動があって前とは違うとこで働いてる。

ゆう あ、そうなんだ。場所どの辺?

ちづる んと、品川のほうなんだけど。

ゆう じゃあちょっと遠くない?

ちづる そうなんだよね、前のとこと反対側だからさ、通勤混むようになっちゃって。

ゆう へー、もう長いの?

ちづる  ちょうど3カ月くらいかな。

ゆう そうなんだ。

ちづる うん。

 

 

ゆう あのー

ちづる ……うん。

ゆう なんで、連絡くれたの?

ちづる あー、びっくりしたよね。いきなり、ごめん。

ゆう びっくりっていうか、まあ、あの、どっちかっていうと、会いたくないんじゃないかと、思ってたっていうか。

ちづる ああ……。

ゆう うん……。

ちづる あの、なんていうか……、その、元気そうでよかった。

ゆう あ、うん。ちづるも……。

 

 

ゆう あー、なんか、あった?

ちづる え。

ゆう いや、なんか、あったんでしょ。

ちづる ……。

ゆう なんかなきゃ、俺に連絡しない、よね。

ちづる あ、まあ、あの、そう……だよね。

ゆう んーと、まあ、俺でいいなら、聞くけど……。

ちづる うん……。えと、さっき、職場変わったって言ったじゃない、3か月前くらい。

ゆう うん。

ちづる それで、あの、こないだね、そこで知り合った先輩にご飯誘われて、ご飯食べに行ったんだけど。

ゆう うん。

ちづる 最初のころにも何度か、何人かでご飯いったりとか、飲みとか、そういうのはあったんだけど、こないだ初めてふたりで飲みに行って。

ゆう うん。

ちづる 帰りに告白、されて。

ゆう ……。うん。

ちづる すごい親切だし、いい人だし、会社でもムードメーカーっていうか、すごいいい感じの人ではあったんだけど、

ゆう うん。

ちづる 全然……その、好きってかんじになれなくて。

ゆう うん……、ん?え?

ちづる 人としては、すごい、悪い人じゃないし、これから好きになれるかもとか、ちょっとおもったりもしたけど、なんか、違うなって、思って。

ゆう ……?

ちづる それでね、あたし、自分でもなんて、いうか、びっくりしてるっていうか、あのね、その、まだ……好きみたいなんだ。ゆうのこと……。

ゆう ……。

ちづる あ~~。突然、一方的にごめんね。でも、もし、まだちょっとでも、可能性あるのならって思って、連絡したくなっちゃったっていうか……。

ゆう ……。

ちづる あの、もしよかったら、考えてみてくれないかな、私と、やり直すこと……。いろいろあって、別れたんだし、今更、ってのもわかるけど……。

ゆう ……。

ちづる あ、ごめん、あの、もしもう彼ちづるいたりしたら……あれだよね。なんか、勝手なこと言っちゃってごめん!

ゆう いや……。

ちづる 迷惑だったよね、ごめんね。

ゆう いや、そうじゃなくて、

ちづる 今日はもう帰るね。来てくれてありがとう。

 

ちづる、席を立つ。

 

ゆう あ、待って!

ちづる ……うん。

ゆう ごめん、ちょっとびっくりして。その、もう嫌われてるって思ってたから。

ちづる え、ああ……。

ゆう うん。

ちづる ……。

ゆう 俺も、やりなおせないかなーっておもってた。

ちづる え。

ゆう だから、連絡もらって、その、嬉しかった、です。

ちづる あ、そう、なんだ。

ゆう うん。

 

 

ちづる そっか。

ゆう うん。

ちづる え、じゃあ、どうする、付き合う……?

ゆう え?……あ、じゃあ、はい……。

ちづる え?いいの、そんな感じで?大丈夫?

ゆう え、何が。あ、いや何がっていうか、

ちづる え、ほんとにやり直したいって思ってる?

ゆう ……思ってるよ。

ちづる ふーん。

ゆう ええ……。あのう、もいっかい、ちづるとやり直して、そのー、ちゃんと?ちゃんと!付き合いたいなって思ってるんで、よろしく……お願いします。

ちづる はい、こちらこそ。

ゆう ……。

ちづる それで、なんだけどね。

ゆう それで…?

ちづる とはいえ、うまくいかなかったわけじゃない、わたしたち。

ゆう うん、まあ、そうね。

ちづる これからどう付き合っていけるのかというのは考えないといけないと思うの。

ゆう それは……。でも、それ、どうやって?

ちづる そうなんだよねー。まずは、お互い何がいけなかったかってことは共有する必要があるんじゃないかな?

ゆう え?え、え~……。

ちづる なに。

ゆう まあ、うん、それも……そうか。

ちづる うん。

ゆう ……確かに、また同じようなことでもめそうな気がしてきた。

ちづる でしょ。

ゆう うん。

ちづる だから、今のうちに話しておかない?

ゆう 何を。

ちづる 今後もめそうなこととか、相手にこうしてほしいみたいなこと。

ゆう えー。

ちづる ないならいいけど。

ゆう えー……。

ちづる んー?

ゆう なくは、ないな。

ちづる でしょ?例えば?

ゆう 例えば……ライン返すの遅くても怒んないでほしい……。

ちづる ……。別に怒ってないけど。

ゆう いやいや怒ってたじゃん。

ちづる それは急いでるやり取りの時にスルーしたりするからじゃん。明日どうする?って話してんのになんで途中から返事来なくなるのよ。どうすんだよ明日、どうもしねえのかよ、ってなるからでしょ。

ゆう すいません。いやでも、ほんとに余裕ないときとかもあるんだって。仕事忙しすぎて帰ったらもうなんもできねえって日もあるじゃん。

ちづる それならそれで今は無理すぎて無理だから返事できないって返事してよ。

ゆう う、はい……。

ちづる こっちにだって都合があるんだよ。二人でつきあうわけなんだから、思いやりは基本だと思うわけよ。

ゆう わかってるよ。それは、気を付けるって、これから……。

ちづる はい。

ゆう はい……。

ちづる じゃあ私からね、んーと、一緒にいるときはゲームばっかしないでほしいんだけど。

ゆう え、そんなにしてないでしょ。

ちづる してたよ。

ゆう してないよ。

ちづる ……。

ゆう ……すいません。

ちづる うん、別に私が料理するのとかはいいよ、作るの好きだし、でもわたしが作ったり片したりしてる間ずっとゲームしてるってのはどうなのかな。

ゆう はい。

ちづる ゲーム好きなのは別にいいよ、でも一緒にいるときもゲーム優先されると、わたしゲーム以下なんだって思って心折れちゃうからさ。いないときにやってもらっていい?

ゆう ごめん。そうします。

ちづる はい。

ゆう あ、でもさー、あのね、その時間限定でやるイベントとかもあるんだよね、そこでしか手に入らないアイテムていうのがあって。

ちづる それならその時間はデートしなくていいよ。そもそも。ひとりでゲームしなよ。

ゆう あ、はい……。

ちづる 以上。次は、そちらからどうぞ。

ゆう う、うーん……。あ!たまにはそっちからもデートプランかんがえてほしいんだよね。どこ行くかとかさ、なんか、いつも俺が考えてなかった?行きたいとことか、ないわけじゃないけど、毎回考えるのって結構大変だったからさー。

ちづる ……よくいうわ。

ゆう え?なに。

ちづる そういうこと言うなら私が行きたいところにも快くついてきてほしいんだけど。

ゆう ええ、なにそれ。

ちづる 私からもいろいろ誘ったからね。

ゆう えー、ほんとに?

ちづる とうにわたしから誘うのは諦めたんだけど。

ゆう え、どういうこと。

ちづる あのさ、私はゆうが行こうって言ったら、映画でも、お祭りでも、ラーメン屋でも一緒に付き合っていってるじゃない。でもさ、私が行きたいって言ったところには絶対ついてきてくれなかったよね。

ゆう そんなことないよ。

ちづる ショッピングどころか、動物園も、遊園地も断られたし、夏の国宝そろい踏み展も、冬の西洋画頂上決戦大展示会も断られました。

ゆう ……あれとかいったじゃん、あのー、草間原縄文の現代アート展!

ちづる たしかについては来たけど終始つまらなそうで私のほうが疲れたわ。

ゆう しょうがないじゃん、だって……興味ないんだもん。

ちづる あのね、悪いけど、わたしも興味ないよ。なんかスーパーマンが戦う映画も、お祭りの混雑も大しておいしくない屋台の焼きそばも。ラーメンなんかニキビ出るから普段食べないようにしてるのに。

ゆう え、そうなの。

ちづる でもさ、ゆうが行きたいっていうから、好きだっていうから、それを共有したいなって思って一緒にいくんじゃない。

ゆう ……ラーメン好きなんだと思ってたわ。初デートの時だって喜んでくれたって思ったし。

ちづる それは勝手に盛られてる記憶だからね?

ゆう そうなの!?

ちづる それはラーメンが好きすぎておいしいからって喜んでんじゃないから。あのね、あれは、あなたの、行きつけのラーメン屋さんに連れてってもらえたのが嬉しかったのであって、おいしいラーメンが食べられてうれしい~っていう喜びじゃないから。

ゆう ええ~。

ちづる それに、あれはイルミネーション見た帰りで、ちょうどいい店がほかになかったから許されてるのであって、初デートがいきなり「ラーメン食いに行きましょう、食べました、おいしかったね、じゃ、解散!」だったらそこで全部終了だからね。

ゆう ……そっか。ごめん、ラーメン好きじゃなかったのか。

ちづる (こいつまじでラーメンのことしか考えてないな。)

ゆう え、じゃあ何が好きだったの?

ちづる え?

ゆう 食べ物?

ちづる え、いろいろあるけど……。

ゆう 肉?

ちづる え、まあ、肉好きだけど

ゆう 寿司?

ちづる まあ、寿司も好きだけど

ゆう メロン?

ちづる まあ、メロンも好きだけど。

ゆう わかめごはん好きだったよね。

ちづる ……まあ、わかめごはんも好きだけど。

ゆう え?一番は?

ちづる ……一番……?……親子丼?

ゆう 親子丼。

ちづる え、だめ?

ゆう だめとかじゃないけど。

ちづる え、なに?

ゆう そうなんだ。なんか、知らなかったなって思って。

ちづる てゆうか、わりと何でも好きだから、特別好きってことでもないけど。

ゆう うん、でも、そっか。

ちづる うん。

ゆう あ、俺はなにかあててみて。

ちづる ラーメンでしょ。

ゆう ばれてた。

ちづる 他にないじゃん。

ゆう そうでした。いやいや、他にもあるよ、好きなの。角煮とかー、トンカツとかー

ちづる そうだ、ラーメンで思い出したんだけど。

ゆう え。ラーメンで?まだある?

ちづる なんでいつも同じ店なの?ラーメン好きなのはいいよ、わかるよ、でもさ、毎回おんなじ店じゃん。いつも味噌とんこつじゃん。味噌とんこつのたまご乗せじゃん。

ゆう なんで?美味いからいいじゃん。

ちづる 美味いよ。でもさ、たまには違うラーメン食べたいときもあるわけ。いやそもそもラーメンばっかりなのが嫌なのにさらにそのラーメンも一択なわけよ、飽きるから。

ゆう 俺は飽きないもん。

ちづる 私は飽きてるから。

ゆう え、ちょっと待って。ちょっとさ、なんでも後出しで文句言うのやめてくれない?

ちづる は?

ゆう だから、なんでその場で言ってくれないわけ?ラーメンやだっていえばいいじゃん。

ちづる まあ、それはね、そうだよ。でもさ、あなたはものすごい笑顔で「ご飯食べに行こう」っていうか、「ご飯」ですらなく、「ラーメン食べに行こう」と、言ってくるわけ、もう決まってるの、ラーメンって。「ご飯食べに行こう」だったらまだしも「ラーメン食べに行こう」なわけ。大変、大変断りづらい。わたしも、おなかがすいている状況でもめたくない。下手したらイライラがピークに達し喧嘩が発生。あのね、イライラしたくないよ、デートなんだから。喧嘩したくないのよデートなんだから。そんな暇があるならばさっさと食事を済ませたい。お腹がいっぱいになれば、そんなに人はイライラしません。んん?ラーメンが嫌なら、代案を用意しろ?そうですね、そうでしょう、定食、パスタ、ハンバーグ、いろいろ私も好きな店あるけど、残念ながら、あなたのラーメンに対する情熱にかてるほどそれらの店に思い入れがあるわけじゃないの。わかるかなあ。あのね、わたしは食べたくないけど、あなたは食べたいんでしょうということなの。あなたがそこまで食べたいなら食べたらいいと思うのよ。そう思って付き合ってきたわけなのよ。ラーメン。でもね、だんだん負担になってくるわけよ、だんだんまたか~ってなってくるし、だんだんいまさら断りづらくなるのよ。だって、いまさらなんでそんなこというの、ってなるじゃん、ほら、なってるよ、今、まさに今。前はそんなこと言ってなかったじゃんってなってるよ。前は思ってなかったの。でも前は前だから。今じゃないの。変わるわけよ、ずっとおんなじ訳ないじゃん、昨日あったことで今日の私は変わるわけなの、それが毎日毎日続いてるわけなのよ、わかる?つまりだな、一カ月も経ったらもう別人みたいなもんだよ?え?一カ月で別人?それは無理あるか~あれ、私はいったい何の話をしているんだろう?

ゆう ごめん、俺も何の話を聞いているのかわからなくなってきた。

ちづる え~、だから、ラーメン、ラーメンだよ、ああもう、なんでラーメンのことばっかり考えてるんだ私は!

ゆう あ、そうだ、俺も言いたかったんだけど、

ちづる え?何?

ゆう 俺の話もっとちゃんと聞いてくれない?

ちづる え、何それ。聞いてるじゃん、っていうか、聞いてたでしょ。

ゆう いやあ?だっていつも途中から流し見っていうか流し見ならぬ流し聞きってかんじで、気づいたらスマホいじってるし?ひどい時は雑誌読み出したりするし?あのさ、俺も聞いてもらいたくて話してるわけ。別に永遠に話してるわけじゃないんだからもうちょっと真剣に聞いてくれないかなあ。俺はさ、ちづるの話聞くとき、もうちょっとちゃんと向き合って聞いてたと思うよ。

ちづる いやいや、あたしも普通に聞いてたって。聞きつつ、まあ、たまにねスマホちょっといじったりしたこともあったかもしれないけど、聞いてたって。

ゆう えー。だいたい途中から空返事ってかんじだったよ。ふーん、そうなんだー、へー、大変だねー、へー。へーって。

ちづる ……だって、あなたの話、いつも愚痴ばっかりなんだもん、何度聞いたと思ってんの、安田部長に対する愚痴、飯島先輩についての不満、同期原田への文句。毎度ほとんど一緒じゃん。こっちももういえることないからね。へー、へーってなっちゃうよ。

ゆう くっそ、でもさ、吐き出したいわけだよ。俺も。ほかに言える人がいないから、言える相手に聞いてほしいんだって。聞いてくれるだけでいいんだって。

ちづる それはわかるけど、永遠に聞かされるこっちの身にもなってよ。

ゆう それに、そっちが話してるときは「ちゃんと聞いて」「いま聞いて無かったよね」とかめちゃくちゃ言ってくるじゃん。なんで俺の話は話半分みたいな感じでいいと思ってるわけ?

ちづる え。ちょっと待ってよ、それ、そっちも後出しじゃん。

ゆう え。

ちづる え、なんでその場で言わないの?

ゆう え……?

ちづる いえばよかったじゃん、話してるときに。適当に返事しないで聞け、とかさ。

ゆう 確かに……?いやでも、いや、聞いたりしたぞ?「聞いてる?」って聞いたらだいたい「聞いてる聞いてる」って帰ってきてさ。

ちづる じゃあ、聞いてたんじゃん。

ゆう だから、その「聞いてる聞いてる」が聞いてない「聞いてる聞いてる」なんだっての。聞いてないってことは興味ないってことじゃん、だんだん興味ない人に話すのも馬鹿らしくなってきて、それで職場の話とかするのやめた。そしたら、何話せばいいかわかんなくなった。

ちづる ……ごめん。

ゆう ……文句ばっかで悪かったと思うけど。

ちづる うん。

 

 

ちづる え、どうしよう。付き合うの、やめる?

ゆう ……あ、ああ……

ちづる なんかやめたほうがいい気がしてきた……。

ゆう う、た、確かに……。

ちづる え、どうする?

ゆう ええ……いや、ちょ、ちょっと待って、あー、試しに?一カ月、付き合ってみる?、

ちづる え?

ゆう とか……

ちづる ……。

ゆう ……え?

ちづる (笑う)……えっちょっとやだ。ねー、前と同じこと言ってるー。

ゆう え。

ちづる 覚えてないの?最初付き合った時も、「お試しで!一カ月だけでもいいから!」って言ってたじゃん。

ゆう あ。

ちづる 成長してねー。

ゆう してねー。

 

笑う二人。

 

ちづる じゃあ、お試しで?

ゆう お試しお願いします。

ちづる じゃあ……そうしよ。

ゆう うん。

ちづる で、じゃあ、早速、なんだけど、

ゆう うん。

ちづる 来週どうする?

ゆう 早速だけど、来週、な……。

二人 クリスマスね……。

ゆう いきなりだなー。

ちづる ま、別に普通で、いいよね、いや普通っていうか、なんか適当にご飯とか、行くくらいの感じでひとまず?

ゆう うん、そう、あ!そうだ、あれ、今年もやってるのかな、あれ行く?

ちづる え、何?

ゆう イルミネーションだよ、川沿いの。

ちづる あ、あのあれ?

ゆう そ、最初のデートでいったやつ。若干遠いかもだけど。

ちづる んー。まあ、じゃあ、行く?

ゆう あーいいじゃん。それ見てそのあと近くで飯食えば。

ちづる んー。ラーメン以外ね。

ゆう わかってます。さすがに一応クリスマスデート?なんだし

ちづる 初デートはそのあとラーメンだったと思うけど。

ゆう だから、蒸し返すなってー。

ちづる はいはい。ま、いいよ、ラーメン以外ね。

ゆう 俺、どっかよさげなとこ予約しとくからさ。

ちづる いいの。

ゆう おう。

ちづる じゃ、よろしくね。

ゆう うん、こちらこそ。

 

ゆう、手を差し出す。ちづる、その手を取る。

 

終わり。

 

 

【作者メモ】

※1 ゆうはちづるのSNSをチェックしており、近況はだいたい把握している。

※2 ちづるはふたりの共通の友達から、ゆうはちづるに未練があることと、現在フリーであることを確認済みである。

※3 その後二人は、翌週のクリスマスデートで、なんやかやあって、結局なじみのラーメン屋に行くことになるし、文句を言いながらもおいしくラーメンを食べます。

 

【書いた人】

丹澤美緒

演劇の人。俳優、劇作家など。

カハタレのメンバー。

 

今作は、8月に上演されたむいとことん『Side By Side.』を観劇して、その後構想して書いていたものを仕上げたものになります。

いらないかもしれませんが、むいとことんのおふたりに捧げます。