新頭町戯曲集

複数人の作家で作られる戯曲によるエセメタバース

カッツさんのターク

★登場人物紹介
カップ麺の容器を集めるのが趣味、劇団員
佐田原 猫舌、劇団員


「カッツさんのターク」


峰、佐田原、稽古場でストレッチをしている。



え、ちょっと聞いてよ、


佐田原
何よ、



これなんだけど、


百万円の札束を出す。


佐田原
え、



百万円、


佐田原
え、百万円、え、すご、



うん、すごいよね、


佐田原
えー、すご、初めて見た、百万円、えー、すご、なんで、どうしたの、え、すげー、え、すごくない、百万円の束、すげーじゃん、すごいよ、この白い包み紙初めて見た、ドラマとかでしか見たことないよ、白い包み紙、帯、帯すげー、白ー、帯、白ー、え、すごくない、う、うわーーーーーー、すげーーー!


間。



どうしたのよ、


佐田原
ごめん、百万円の束見たの初めてすぎて、興奮がジワジワきちゃって耐えられなくて叫んじゃった、ごめん、



偽札だよ、


佐田原
なんだ、偽札か、偽札?え、そっちの方がすごくない?



すごくないよ、


佐田原
すごいよすごいよ、偽札すごいよ、なんで偽札なんて持ってるのだよ、



だからそれを聞いてよって言ってるのだよ、


佐田原
聞くよ聞くよ、どうぞどうぞ、是非話したまえよ、



いや、昨日さ、なんかあまり面白くないパフォーマンス見に行っちゃったわけ、なんだか、服がいっぱい並んでるとこに俳優が二十人ぐらい一人づつ入ってきて服を使ってパフォーマンスするってので、なんか服を着たり、服を擬人化させて踊ったり、服を振り回したり、服を食べたり、服を愛撫したり、で、それが一人づつやるので延々と続くって感じで、うわーってなっていたわけ、


佐田原
へー、面白そうだね、



面白くないから、見れば分かるから、


佐田原
見に行こうかな、どこでやってんの?



スペースパドリックよ、


佐田原
あー、スペパ、行ったことあるよ、ちょうどいいよね、スペパ、駅からも近いし、



まだやってるけど見に行かなくていいよ、


佐田原
え、行こうかな、



いや、その話はいいのよ、


佐田原
偽札の話ね、



そう、偽札の話。見終わった後、スペパ出て、うわあーてなっていたから、パチンコでも行こうかなって思って、なんか駅と真逆のところにあるパチンコ屋行こうと思ったの、で、歩いてたんだけど、


峰、歩き始める、



こうやって(日差しを遮るポーズ)、眩しかったから、


佐田原
昨日暑かったよね、



そう、すんごい暑くて、汗ポタポタ垂れてくるわ、服ジトジトするわ、ミンミンミンミン蝉鳴いてくるわ、蝉うるせー、うるせーけど頑張って足掻ききりたまえよ、お前たちの足掻きは俺、いつも尊敬してるぜ、でもうるせーって歩いてたの、そしたらさ、パチンコ屋に行く途中のビルみたいなとこの端っこにさ、張り紙があるの、養生テープで貼ってんの、A4用紙一枚にマジックで、「カッツさんのタークあり〼」て書いてあるの、


佐田原
カッツさんのターク、って何?



って何?ってなるよね、俺もなったの、なんかよくわからんのだけど、その時の俺はタバコかなんかかなって思って、


佐田原
あー、ターク、タークタバコっぽいなあターク、でもカッツさんて誰だ、



そう、本当そうで、カッツさんて誰なんだろーって思いながら、その張り紙の隣に地下へ降りてく階段があったから行ってみたの、


佐田原
お前ー、勇気あるなー、


峰、階段を降りると受付の場が立ち上がる。



階段降りたら、受付よ、受付だけがあるのよ、いや本当、すみませんー、


受付(奥から)
はいー、


受付、あらわれる。



あのう、上の張り紙見たんですけど、カッツさんのタークって、


受付
あー、カッツさんのタークね、ちょっと待ってくださいね、


受付、はけていく。



ああ、ちょっと、カッツさんのタークが何か聞きたいんですけど、


受付(奥から)
はいー、ちょっと待ってくださいね、



どうやら奥には事務所かなんかがあるらしくて、受付の人はそこで仕事する傍らカッツさんのタークの受付をしているらしくて、で、五分ぐらい、待たされたんだけど、


受付(あらわれながら)
はいー、すみませんお待たせしましたー、こちらが、カッツさんのタークになります。


受付、A3用紙の束を渡す。



あ、これが、カッツさんのタークですか、


受付
はい、それとこれ、



て言って渡されたのが、百万円の偽札なのよ、


佐田原
え、なになになになに、全然わかんない、



え、と、これは、なんですか、


受付
料金です、



あ、え、料金、


受付
マイナス百万円です、



あ、マイナス百万円か、マイナス百万円だから、こっちがもらえるのか、百万円?


受付
安心してください、偽札なんで、



あ、なんだ、偽札か、


受付
返してくださいね、



ええと、返すって、百万円のことですか?


受付
あ、どっちもです、それも読んだら返してくださいね、それでは、


受付、はける。



ああ、ちょっと待って、


受付、戻ってくる。


受付
はい。



あのう、これは、なんですか、これは、どういうニュアンスで、こんな偽札を渡して、


受付
あ、それはですね、私どもとしては、カッツさんのタークを読んでいただくってことがもうこの上ない喜びでありまして、もう本当百万円ぐらい読んでくださる方にあげたいよって心持ちなんですけれどもですね、あいにく百万円なんて大金は私ども持ち合わせておりませんので、気持ちとして、こういうことをしているわけです、まあ、なので、読んだら返してください、



はい、わかりました、


受付
それでは。


受付、はける。



ああ、ちょっと待って、


受付、戻ってくる。


受付
はい、なんでしょうか。



これは、あのう、この、カッツさんのタークは、折っても良いものなんでしょうか。


受付
あ、どうぞどうぞ、いくらでも折り曲げて持ちやすくしていただいてかまいません、それでは、


受付、はける。



なんか受付の人、めちゃくちゃ忙しそうで、で、そのやりとり終わったんだけど、


佐田原
そのカッツさんのタークってなんなのよ、



そのカッツさんのタークってのはこれだよ、


佐田原、峰から「カッツさんのターク」を受け取り、読む。


佐田原
これは、何、セリフが書いてあるね。



うん。


佐田原
なんか、ト書きも書いてあるね。



うん。


佐田原
戯曲?



うん、戯曲集、


佐田原
あ、集ってんだ、戯曲、集ってんだ、



読んでみる?


佐田原
あ、うん、でも、そろそろ、稽古始まるから、



あ、うん、そうだな、じゃ、今度別日に集って読もうよ、


佐田原
あ、オッケイ、うん、いいよ、



今週末空いてる?


佐田原
今週、はあ、ちょっと今週末バイト入ってるわ、



じゃ、来週末は?


佐田原
来週末は、あ、俺、週末基本バイトだわ、



平日は、


佐田原
平日も、そうね、なんだかんだでバイト、かもなあ、



なんだよ、関わりたくないのかよ、


佐田原
ちょっと関わりたくないんだよ、そんな変態的出会いから入手した戯曲はなんか怖いんだよ、



あ、結構面白いよ、


佐田原
あ、結構面白いんだ、



女性役も必要だから、耳子君も誘ってみる?


佐田原
あ、いいね、耳子君も来るなら行こうかな、今週末は、日曜なら昼から空いてる。



じゃ、日曜昼に、


佐田原
うんそれで、あ、コピー代とかは、



いいよ、いいよ、俺が持つから、


佐田原
あ、ありがとう、


間。


佐田原
使っちゃダメだよ、



え、


佐田原
百万円。


続く。