新頭町戯曲集

複数人の作家で作られる戯曲によるエセメタバース

頭山メモリー

「頭山メモリー
 
●登場人物紹介
・穴岩耳子、舞台俳優、魚座
・早苗、ペヤングにシーザードレッシングをかける人。
 
 
  頭山の頂上に日の出を見に山に来た早苗と耳子、
  目の前に絶景、この世のものとは思えない絶景が広がっているため、二人は感動している。
 
 
早苗・耳子
うわー、
 
耳子
絶景ですね、
 
早苗
絶景、本当絶景、
 
耳子
なんだろう、本当、生きててよかった感ある。
 
早苗
ああーーー、なんだこの場所、すんげーーー、
 
耳子
ねー、
 
  耳子、スマホで写真撮る。
 
早苗
そりゃあ撮るわな、絶景、
 
  耳子、スマホで動画撮る。
 
早苗
そりゃあ動画も撮るわね、絶景だし、
 
耳子
うわー、すんごーい、はーい、早苗ちゃんですー、
 
早苗
どうもー、早苗ですー、なにこれ、
 
耳子
動画ですー、
 
早苗
それはわかるけど。なんで動画?
 
耳子
踊って、
 
早苗
え?
 
耳子
踊って、踊って、
 
早苗
え、踊る?踊るはちょっと違うくない?
 
耳子
絶景の前で踊ってみたらどうかなって、
 
早苗
その絶景の楽しみ方なんか違くない?
 
耳子
ええー、じゃあ私踊る。
 
早苗
あ、踊るんだ、
 
耳子
早苗ちゃん、撮って、
 
早苗
うん。
 
  耳子、ロボットダンスを踊る。
 
早苗
あ、ロボットダンスなんだ。
 
  早苗、スマホで撮る。
 
  耳子、ロボットダンスに合わない曲調の歌を歌い始める。
 
耳子
ゼケイ、ゼッケーイ、ゼケイ、ゼッケーイ、オウ、霧霧霧霧霧にまみれてぽっかり薄いオレンジにもまれて、地中の果ての果ての社会で、溜まったドスドス黒い有耶無耶、ゼケイ絶景にまみれ消えてく、ありとあらゆる刹那の痛みを、ポケモンゴーとかしてた二年前、ポンポンポンポン踊った四年前の、アタシに見せつけるごとくロボットダンス、今年もよろしくガタガタのマイボディ、ゼケイゼッケーイ、ゼケイ、ゼッケーイ、ゼケイゼッケーイ、ゼケイ、ゼッケーイ、ダンス。
 
  耳子、ダンスをキメる。
 
耳子
はーい、ありがとうー、気持ちよかったー、
 
早苗
すごいね、
 
 耳子、スマホで絶景を撮る。
 
早苗
絶景の楽しみ方、独特だね、
 
耳子
え、何?
 
早苗
絶景の楽しみ方、独特だね、え、今の何?、歌?、作ったの?
 
耳子
うん、出てきちゃった、絶景効果で歌出てきちゃった、ダンスと共に、
 
早苗
すごいね、へー、正直驚いてる、絶景ってすごいね、可能性、あるね、
 
耳子
あるよあるよ、絶景には無限の可能性があるから、
 
  耳子、ねるねるねるねを取り出す。
 
早苗
え、何?、怖いんだけど、
 
耳子
 
早苗
え、ねるねるねるね、するの?
 
耳子
絶景の前でねるねるねるねしようと思って持ってきたんだ、
 
早苗
絶景の楽しみ方、独特すぎやしない?
 
耳子
早苗ちゃんの分もあるよ、
 
早苗
あ、ありがとう、
 
  二人、ねるねるねるね、ねるねるする。絶景の前で。
 
耳子
わー、見てー、ねるねるねるねの向こうに絶景があるー、おっかしー、
 
早苗
へー、
 
耳子
キャンディチップがいつもより輝いて見えない?
 
早苗
あ、このツブツブ、キャンディチップって言うんだ?
 
耳子
いやー、違いますね、絶景の味がする。
 
早苗
え、するかね?
 
耳子
山芋とオクラも持ってきたんだけど食べる?
 
早苗
ごめん、絶景ってあんまネバネバしたものと相性良くないよ、
 
耳子
え、嘘、絶景の前でこそネバネバさせたくない?
 
早苗
させたくない、家でひっそりとネバネバさせたい。
 
耳子
えー、そっか、じゃあ、UNOでもしますか。
 
早苗
もっと純粋に絶景楽しもうよー、
 
耳子
え、純粋?
 
早苗
絶景プラスして楽しむみたいな考え方やめない?
 
耳子
絶景プラス?
 
早苗
ねるねるねるねプラス絶景とか、UNOプラス絶景とか、なんだろう、すごい、いや、わかるんだけど、冒涜、絶景に対する冒涜なの、もっとなんだろう、純な絶景感じたいの。
 
耳子
どうすればいいの?
 
早苗
どうもしなくていいの、絶景全身で感じながら深呼吸するだけ、それだけでいいの。
 
耳子
へー、
 
  耳子、スマホで写真を撮る。
 
早苗
スマホで写真撮るのやめない?
 
耳子
スマホで写真くらいはいいじゃん。
 
早苗
心のメモリーにおさめれば良くない?
 
耳子
心にメモリーなんてあるの松崎しげるくらいだよ、
 
早苗
そんなことはなくない?
 
耳子
そんなことはなかったか。
 
  耳子、スマホをいじる。
 
早苗
スマホ見るのやめない?
 
耳子
見るのもダメなの?
 
早苗
え、だって目の前のこんな見ても見ても見尽くせないものあるのに、何をスマホで見るの?
 
耳子
小室圭さんが合格したらしいよ、
 
早苗
え、弁護士試験?ずっと受けてたやつ?
 
耳子
うん、
 
早苗
へー、おめでとうー、
 
耳子
ねー、めでたいねー、
 
 
  間。
 
 
早苗
って、なっちゃうじゃん。
 
耳子
何?
 
早苗
って、今、この、今この時みたいになっちゃうじゃん、
 
耳子
ん?どうゆうこと?
 
早苗
だから、スマホ見て、小室圭さんの話したら、もう、違うじゃん、もう、絶景感じる身体から遠のいちゃうのよ、小室圭さん寄りの身体になっちゃってるのよ。
 
耳子
小室圭さん寄りの身体って何?
 
早苗
わっかんないかなー、今、今ね、今絶景見ても、一瞬小室圭さんのなんか早足で歩いてそうな画像が頭に浮かぶのよ、浮かんじゃうのよ、それって小室圭さん寄りの身体じゃん。いや、いいのよ、時には小室圭さん寄りの身体になることもあっていいのよ、っていうか、恋ってそういうことだと思うんだけど、
 
耳子
え、小室圭さんのこと、好きなの?
 
早苗
ちっがうのよ、そういうことじゃなくてね、わっかんないかなー、わかった、とりあえず、黙って、なんもしないでおこう、なんもせず、じっと、絶景眺めよう、本当、なんもしない。
 
耳子
息は?
 
早苗
息はしよう、息しないと死んじゃうから、心中しにきたわけじゃないんだから。むしろ吸ってこう、深呼吸どんどんしてこう。
 
 
  二人、深呼吸。
  何度か繰り返すが、すぐにやめて、長めの間。
 
 
耳子
美しい人生よ、
 
  間。
 
耳子
限りない喜びよ。
 
  間。
 
耳子
この胸のときめきを、あなたに。
 
 
早苗
いいね。
 
耳子
びっくりした。
 
早苗
びっくりすぎるくらい、いいね、合うね、絶景と松崎しげる、相性良いね。
 
耳子
うーつー
 
二人
くしい人生ようおうー、かぎりない喜びをー、この胸のときめきを、あーなたにぃいーー、
この世に大切なのは、愛し合うことだけと、
あーなたあーは、おしえてくうーれえーるー。
 
  二人、絶景になる。
 
早苗
すごい、なんだろう、全身絶景になってる。
 
耳子
わかる、もう全身が絶景に溶け込んでるよね、しげる効果で、
 
早苗
最上級、最上級の絶景体験かもしれない、まさかの、
 
  間。
 
耳子
お願い、お願い、この今この状況で、ねるねるねるね挟ませてもらっていい?
 
早苗
、、、いいよ。
 
 
  二人、ねるねるする。
 
 
終わり。