●登場人物紹介
佐田原、「劇団ムササビカッター進行中」の所属俳優、よく叫ぶ。
峰、「劇団ムササビカッター進行中」の演出部、俳優もする、世の中なめてる。
佐田原、峰、並んで歩いてる。
佐田原
あっつ、むしあつ、
峰
うーん、
佐田原
どうなってんすか、季節、季節どうなってんすか、蒸されてますけど、シュウマイになっちゃいますよ。
峰
ふーん、
佐田原
っていうかここどこ、何このザ、住宅街、なんでこんなザ住宅街歩いてるの、
峰
うーむ、暇だからなあ、
峰タバコを取り出し、火をつける。
佐田原
うわーーー、歩きタバコーーー。わりいいいいい。
峰
歩きタバコ禁止なんてどこにも書いてないじゃん、
佐田原
峰
わかったわかった、留まりタバコにするから。
峰、佐田原、立ち止まる。
佐田原
むっしあつう、
峰、ぼーっと空を見てる、
佐田原
え、本当は留まりタバコもダメだよ、ここ喫煙所じゃないから、え、留まりタバコもほとんど歩きタバコだからね、ここ喫煙所じゃないから。
峰
曇りの方がよく見えるっていうよね、なんか、なんだっけ、黒澤明だっけ、いや違うか、なんかラジオで、なんかの時代劇の監督が、なんだっけ、なんか俳優が、名前忘れたんだけど、白鶴、マルってCMラジオでやってる人、今ね、今の話ね、多分昔の白鶴、マルって違う人だったんじゃないかって気もするんだけど、ちょっとよくわかんないけど、なんかラジオで流れてくるのよ、お仕事中のみなさんお疲れ様です、一旦ストレッチしませんか、はい、大きく手を伸ばして頭の上で組んで、はい、白鶴、マルー、ってストレッチ誘導してくれたのかと思いきや、白鶴マルポーズを無理矢理させられるって意味不明CMがあって、この世のどこかに、ああー、ストレッチしようかなああって手を伸ばしたら、あ、これ白鶴マルポーズになってる、いやー、いっぱい食わされましたなあ、ってなってる人がこの世にどこかに何十人かくらいはいるのかなあって思うと、ワクワクするね、俺は絶対ストレッチなんてしようと思わないから、引っかからないけど。
佐田原
え、これなんでこんな住宅街歩いてるの、
峰
暇だし、お金ないし、楽しいかなって。
佐田原
留まってるの想像以上にしんどいな、
峰
留まってても歩きタバコ認定されるんだ、じゃ留まってても歩いてても変わんないか、
峰、佐田原、歩き始める。
佐田原
あ、あ、あ、え、いや違う、うわ、なんなん、たまにこういう風に置いてる超リアルな犬の置き物なんなん、犬かと思ったよ、っていうか一軒家持ってんだったら犬飼えよ!
峰
偏見だなあ。
佐田原
あとちっさいサンタクロースとか、シンデレラのちっさいなんか何人かいるやつとか、なんで住宅街の玄関前ってちっさいおっさん飾りたがるの、どういうことなの、
峰
偏見、偏見、ちっさいおっさん以外もいっぱいあるって、
佐田原
え、ちょっと待って、
峰
なんだこれ、
彼らの目の前にナツコ像、現れる。
ナツコ像、微笑んでいる。
峰
ちっさいおっさん以外もいるやない、でっかいおばちゃん、
佐田原
バチ当たるよ、
峰
ナツコ像、誰なんだ、ナツコ、
佐田原
なーんでこんな、空き地に堂々と一体だけ建てたかねえ、家建てられるのに、
峰
え、さっきから何、家建てたいの?佐田原、
佐田原
家建てたいか建てたくないかで言ったら家建てたいよ、絶対無理だけど、だけど一軒家住みたいよ、今のバイト生活じゃ絶対無理だけど、
峰
やめろよ、安い時給とか、俺なんか最近変なバイトしてがっぽりだよ、最近なんか変なマダムに変な星に招待されて、変な色の宇宙人たちにジャパニーズカルチャー、裸で紹介してやっただけで日給十万だよ、十万だよ、もうなんもしなくていいわ今月。
佐田原
怖いよ、なんだよそのバイト、
峰
紹介しようか?
佐田原
やだよ、ってめっちゃ見られてる気がする、誰なんだ、ナツコ。
峰
銅像ってのは不思議だね、うーむ、そうね、ちょっと待ってね、
峰、タバコに火をつける。
峰
つまり、2種類あるわけじゃない、考えられるのは、愛か憎悪だよ。
佐田原
なるほど、
峰
つまりナツコ愛してる永遠に、、って思いでこの土地に永遠に、、って思いで、夫なのか恋人なのか、片思いだったのかわかんないけど、永遠に、、って感覚が愛でしょ、いや、すごいね、物的ってすごいね、愛なんて形ないもの、触れられなければ寂しいもんだよねってイエモンも言ってるからね、銅像ってのはすごいね、ザ、物、ザ、重量感、ザ、イエローモンキー、ザ、カッチカチ、愛がカッチカチ、残る、残りそう、や、やっぱ風に飛ばされて消えないからね、銅像、ふーっていつの間にか消えないものだからね、思っきし壊してやろうってやらないとなくならないものだからね、すごいね、愛って、愛の銅像って。しかも壊しづらいしね、人の形してると、なんか永遠に残りそうだよ、愛の銅像ってのは、
佐田原
それが、愛によって建てられた説ってことね、憎悪説もあるってことだよね、
峰
うーむ、そうね、憎悪説ね、なんだろね、自分で言っといて、パッとパパッと言葉出てこないけど、つまり、そうね、私はお前を見てるからなって、去っていった恋人に送りつけたとか、
佐田原
え、この銅像を?
峰
そうそう、この銅像を、で、別れた男が、ええ、銅像届いたー!って、ええー、ナツコ届いたー!ってナツコ着払いで届いたー!って、こわー、って、終わりにしよう、ってあの晩あのプリンセスホテルで約束したのにいー、って、互いに二人の関係は忘れようって約束したのにー!って、めっちゃ覚えさせようとしてくる、記憶に刻み込みにかかってきてる。私のこと忘れんなよ、お前のことナツコはずっと見てるからな、うふふふ、って、ほら、微笑んでるじゃん。
佐田原
そんな微笑みなの、この微笑み、こっわ。
峰
こっわいよ、こっわいよ、そんなもん家の中に置いとけねえよ、あ、そういえばおばあちゃんの土地余ってたな、あそこに置いといてやれ、お地蔵さんみたいでええやろって、で、この住宅街のど真ん中の空き地のど真ん中に堂々と置かれてるってわけ。
佐田原
絶対、それ、絶対それ、なんかあったよ、家の中に置いてる時、絶対、目動くとか、なんかブツブツ喋ってるとか、絶対そういうのあって、やべーってなっておばあちゃんの土地来たんだよ、絶対そうだよ、
峰
佐田原
なかった、なんか鳩と戯れる少女って銅像があったな、小学校、
峰
え、俺の小学校銅像あったのかな、思い出せんな、
佐田原
あと、平和の象徴みたいな、複数人で手をつなぎ合ってるみたいな、抽象度高めのやつとか、
峰
ああー、なんかはあった、何かしらはあった気がするな、
佐田原
あと、トーテムポールとか、
峰
トーテムポールは銅像とジャンル違うだろ、あれ、なんなん、呪物?、なんで小学校にトーテムポールあるの?一瞬だけゼルダの伝説っぽい感覚にさせてくれて好きだけど、って、あったなあ、銅像、待って、今俺の記憶の中の小学校の校門前に立ってるから、
佐田原
え、今、今、記憶の中の小学校の校門前に立ってるの?タバコ吸いながら?
峰
ああー、この、体育館と本校舎の渡り廊下、ここで体育館シューズに履き替えなければいけないんだけど、ここで当時の教頭先生がタバコ吸っててうわあ、、、ってなったな、
佐田原
へえー、そこで今、峰、タバコ吸ってんだ、
峰
この渡り廊下を突っ切って、そしたら広い校庭が広がってて、左側が体育館、たまに体育館の扉空いてたら、こっからバスケットボールが校庭に向かって飛んでくるんだよね、緑の幕があるのに、よっぽどのパスミスした時、で、真ん中はだだっ広くて、左側の端っこ、柵に沿ってうんていとか、鉄棒とか、なんかタイヤの遊具とか、ならんでるんだけど、右側の本校舎L字型になってて、そのL字型に沿って歩いていくと、校舎終わりからプールに繋がる道があって、そこを横切って、つまり校舎の裏側に行くところがあって、校舎の裏、駐車スペースみたいになってて、その入ったとこあたり、プールの区画の傍くらいに、え、え、
ナツコ
うふふふふふ。
峰
待って、あ、え、なんで、なんでナツコいるの、なんで俺の小学校のプールわきにいるんだよナツコ、え、なんで、なんでナツコここにいるの?え、ナツコ誰なの?
ナツコ
うふふふふふふふふふふふふ。
終わり。