登場人物
坂本 ゴミ回収作業員
部長 坂本の上司
ゴミ ゴミ
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ゴミの分別
部長、デスクで書類を手に持ち、PCを見ている。
部長 (袖から声をかけられたのに対して)おお、お疲れ。
部長、壁の時計をちらとみる。
部長 遅いな。
部長、PCに戻る。書類を置いて新聞を読みだす。
部長 芋も値上げかよ。
坂本、入ってくる。後ろにゴミを連れている。
坂本 おつかれさまでーす。
部長 おう、遅かったな。だいぶ。ほかの皆もうとっくに終わってるぞ。
坂本 すんません。
部長 早く報告書頼むわ。俺この後定例会議なんだよ。
坂本 いやちょっとトラブルありまして。
部長 おい、なんだそれ。
坂本 そうなんですよ。
部長 何部外者連れ込んでんだよ、ここ関係者以外立ち入り禁止区域だぞ。わかってんのか。
坂本 部外者っていうか。ゴミっす。
部長 あん?
坂本 出されてて、今日。
部長 ん?で?
坂本 粗大でいいんすか?資源?
部長 ああ。ん、お前の担当んとこ今日なんだ、粗大じゃないだろ。
坂本 そうなんすけど、何ごみかわかんなくて、そのまま置いとくわけにもいかないですし。とりあえず回収したんですけど。
部長 いや、基本回収予定のものしか回収しない決まりだからね。ダメだから。
坂本 でも今日最高気温34度ですし、そのまま置いとくのはちょっとどうかなって。
腐ったら異臭しますし。
部長 次からはやんないでよ。ほかの曜日のやつだしといてもいいって思われちゃうの困るんだから。
坂本 すいません。
部長 まったく。
坂本 あれ、腐るかもってことは、燃えるのほうがいいんですかね、燃えますよね。いや、でもあれか、骨は残るか?だったら最終的には不燃か?骨だけになったら30センチ以下になりますかね、そしたら不燃で回収OKってことでしょうか。
部長 まてまて。落ち着け。(ゴミに)おい、うーん、なんだ、君!ちがうか、そこの、まあいいや、君!
ゴミ (無反応)
部長 しゃべれるか、名前は?
ゴミ (無反応)
坂本 ゴミなんすからしゃべらないすよ
部長 まあ、いいや、坂本、手伝え。
坂本 え、なんすか。
部長 それの手を広げて。ほれ。
坂本 こうすか。(ゴミの両手を広げて持つ)
部長 うーん。(ゴミをすみずみまで観察する)
坂本 なにしてんすか。
部長 反対。
坂本 え、えーっとこう?
部長 おい、坂本、そもそも粗大ごみだったら粗大ごみ処理券が貼ってあるはずだろ、どこにもないけど。
坂本 あ、確かに。
部長 というわけで、ビニールに入ってもいないし、あれだ、そもそもこれゴミじゃねえんじゃねえか。
坂本 まじっすか
部長 返してこい。
坂本 え。
部長 万事解決。ほれ。
坂本 えっと
部長 まさか、覚えてないとか言わないよな?
坂本 いや、覚えてないわけではないですけど、よく考えたらゴミ券貼ってあるわけないですよ。
部長 なんで。
坂本 だって、これ、俺が着せた服ですもん。
部長 んん?
坂本 全裸だったんで、さすがにそのまま連れ歩くのもあれかなと思って、車にあった俺のジャージ着せときました。
部長 そうか、全裸だったのか。
坂本 はい。
部長 じゃあ、ゴミだな。
坂本 ですよね。
部長 再利用できそうだから、資源じゃねえか?
坂本 さすが部長。
ゴミ あのー。ちょっともうかなりしんどいんで、再利用はちょっと。
部長 そうか、なら、燃えるだな。
坂本 燃えるでいいんすね。
部長 いいだろ。
坂本 じゃあ、燃えるで。
頷くゴミ。
坂本 よかったな
頷くゴミ。
部長 じゃ、俺、会議だから。
坂本 はい。
部長 もう報告書、あとでいいから、俺の机に出しといてくれ、出してから帰れよ。
坂本 はい。
部長去る。
坂本 じゃ、いこっか。
ゴミ、行こうとする坂本を留め、ジャージを脱ぎ、坂本に丁重に返却する。
坂本 いいよ、気にすんなよ!こっちだ。
坂本、ゴミを連れて去る。
終わり。